WHOISの今後ICANN理事会がEPDPフェーズ1最終報告書を承認

WHOISの今後:ICANN理事会がEPDPフェーズ1最終報告書を承認

Brian King
Director of Internet Policy and Industry Affairs

2019年6月4日

2019年5月15日に開催されたICANN理事会の特別会議において、EPDPのフェーズ1最終報告書に盛り込まれた方針に関する推奨事項29件中27件が承認されました。本フェーズ1報告書は、EUの一般データ保護規制(GDPR)に準拠したWHOIS(現「登録データ」)の再開発を目的とした、ICANNコミュニティによる総意に基づく方針(コンセンサスポリシー)の策定に向けたボトムアップの取り組みが始まったことを意味します。ICANN理事会は、同コミュニティがコンセンサスポリシーを策定するまでの短い期間、登録データをGDPRに準拠させるための緊急対策として暫定仕様(Temporary Specification)を可決していましたが、本報告書に加え、EPDPのフェーズ2を以って、この暫定仕様が終了します。

EPDPのフェーズ2では、登録データにアクセスする合法的な根拠を持つ組織が、実際にデータにアクセスするための枠組みを定めるための取り組みが、すでに始まっています。

 

 

方針内容

ボトムアップのコンセンサスポリシー案は過去に承認されているため、EPDPの推奨事項の大多数について、ICANN理事会は十分に検討することなく、これらを承認することが予想されていましたが、実際、その通りになりました。ICANN理事会は、最終的な「サニティチェック」として、ICANN(法人)に委託された義務の下で、カリフォルニア州非営利公益法人(California Nonprofit Public Benefit Corporation)としての公共の利益のために、フェーズ1報告書に盛り込まれる推奨事項29件中2件を却下しました。

MarkMonitorが先日開催したウェビナーの中で、現行の暫定仕様に基づき登録データが公開可能になり、新登録データポリシー(Registration Data Policy;ICANN使用のタイトル)に基づきデータの取得が可能になる変更内容について説明しました。変更点の一部をご紹介します。

 

  • 管理者情報がなくなります。
  • レジストラが登録者に技術窓口を指定する機能を提供する義務がなくなります。
  • レジストラが技術窓口に対応する場合、技術者情報は、名前、電話番号、Eメールアドレスの3項目に制限されます。
  • WHOISが提供する31項目(Phone/Fax Extension(電話/FAXの内線番号)フィールドを個別に数えない)のうち、登録データポリシーの下で義務付けられる項目は3件のみです。概要は、以下の表をご覧ください。

 

 

除外された項目

EPDPのフェーズ1では、目的2が大きな物議を醸し、知的財産所有者、政府、サイバーセキュリティ専門家、消費者保護団体は、暫定仕様に記載され、GDPRに義務付けられる通りに、登録データを処理するという目的を明示的に認めるように要求しました。

一方で、保護団体は、この問題におけるICANNの役割を最小限に制限することを求め、レジストリやレジストラは、このデータを合法的に第三者に提供できることを認める前に、確実な法的根拠を求めました。最終報告書では、第三者のタイプを明示的に指定せずに第三者アクセスを推進することで、安全で安定性や回復力のあるDNSの調整というICANNの役割(Mission(ミッション)やBylaws(定款)にまとめられる通り)を認めた、混合型の「暫定」目的2によって、この膠着状態が解消されました。

先日、ICANNと欧州委員会(EC)の間で交わされた公開通信の内容から、ICANNの目的と第三者の目的を区別するために明確性を向上させる必要性が明らかとなったため、理事会はさらなる改善のため、この目的を却下し、差し戻しました。

また、現在Organization(組織)フィールドに記載されるすべてのデータの一斉消去をレジストラに認める推奨事項12の内容を一部却下しました。推奨事項12は、このフィールドには法人名しか意図されていないにも関わらず、個人データが含まれる可能性があるため削除する必要があることが理解できない、ICANNコミュニティの人々に関わる問題でした。

ところが、理事会は、このデータを全消去すると、「登録者を特定するための情報が失われる可能性がある」と警告しながら、Organizationフィールドの非公開を義務付ける推奨事項12の一部を承認しました。その結果、Organizationフィールドは、要請があった場合に、レジストラの裁量で公開するか、フェーズ2で判断される「知る必要がある場合」に限り、公開されることになります。

 

今後の展望

理事会が、分野別ドメイン名支持組織(GNSO)の圧倒的多数によって可決されたコンセンサスポリシーを一部でも却下した例は、ほとんどありません(初めてのことかもしれません)。却下された推奨事項について、GNSO評議会との協議が始まります(https://www.icann.org/resources/pages/bylaws-2018-06-22-en#annexA1ICANN Bylaws, Annex A-1, Section 6.c.)。GNSOは、この結果に基づき、推奨事項を確定または修正の上、理事会に再提出することができます。

承認された推奨事項は、ICANNの実装フェーズに入ります。このフェーズでは、レジストラとレジストリが2020年2月29日までに、新ポリシーへの準拠を達成させる必要がありますが、理事会は「実装が複雑であり、また、データ保護当局(DPA)その他のソースから推奨事項に対する追加フィードバックが提供される可能性があるため、期日までに完了しない可能性がある」と警告しています。この期間中、レジストラとレジストリは、現行通り、暫定仕様のルールに基づき、事業を継続することができます。

MarkMonitorは、EPDPのフェーズ2における登録データへのアクセスモデルを統一するための取り組みも含め、継続的に、知的財産所有者、消費者保護団体、サイバーセキュリティ専門家をサポートします。ご質問やご提案がある場合、または本活動への参加をご希望の場合は、MarkMonitorまで直接ご連絡ください。

 

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