次世代のWHOISが誕生

次世代のWHOISが誕生

Brian King
MarkMonitor

2019年8月26日

今日、何十年にも渡り繰り広げられてきた、ドメイン名所有者情報の構造や処理方法を改善するための取り組みが、重要な節目を迎えました。今後、これまでの43番ポートを使用するWHOISプロトコルに代わる新たなドメイン名所有者情報表示メカニズムとして、RDAP(Registration Data Access Protocol)が使用されることになります。

 

RDAPの起源

一般的にWHOISと呼ばれるドメイン名登録者情報は、何十年にも渡り、さまざまな政策議題として、ICANNで議論されてきました。ICANNのワーキンググループは、ドメイン名登録者に義務付けるべき情報の種類や、ドメイン名登録者情報の非公開化に対する是非、またデータアクセス性に関わる政策の開発に注力しています。このような、時に政治色の濃い対立的な議論とは全く別に、広義のICANNコミュニティは、そうした政策議論の行く末に関わらず、少なくともドメイン名登録者情報の形式を統一させるべきという意見で以前から一致していました。

 

2002年には、このような議論が起こっていましたが、2019年8月26日をもって、ついに登録者情報出力プロトコルとしてRDAPを利用することがドメイン名のレジストリやレジストラに義務付けられました。

 

現状

現時点では、43番ポートを使用する既存のWHOISプロトコルを使って登録者情報を送信することが義務付けられています。ただし、ICANNと「契約者」(ドメイン名のレジストリやレジストラ)は、このプロトコルの廃止(早ければ2020年中)までの適切なタイムラインについて、すでに議論を進めています。

 

新プロトコルを使って送られるデータセット名からも、アクセスプロトコルとそのデータ自体の略記という2つの意味を持つ「WHOIS」(略語に見えるが、略語ではない)という言葉が消えます。WHOISに代わる次のプロトコルとしてRDAPが使用されることになりますが、このプロトコルを使って送信されるデータのためのキャッチーな略語は、まだ見つかっていません。ICANNコミュニティの多くの人々が、「登録者情報」という説明的な言葉を使用しており、驚くべきことに、ICANNですら、キャッチーな略語を定めることをあきらめたようです。代わりに、whois.icann.orgを新しい登録者情報検索サイト(https://lookup.icann.org)にリダイレクトしています。

 

メリット

今後、国名フィールドは、必ず「US」のように表示されます。43番ポートを利用したWHOISでは、任意のデータ形式が認められていたため、国名フィールドは、US、USA、United Statesと記入されるか、該当のレジストラ特有の記入方法に基づき埋められていました。主権の問題を難しくさせる地理的な要素を検討しなければならない可能性が輪をかけて、この問題を悪化させていました。

 

一方、RDAPは、ccTLDの割り当てにも活用されている、ISO 3166-1 alpha-2(2文字の国名コード)と同じ国名コードによる出力を義務付けています。国名やその他の登録者情報フィールドのデータ表記方法を統一させれば、ブランド所有者やサイバーセキュリティ専門家にとって、サイバースクワッティング、フィッシング、ボットネット、その他の攻撃者の検出や、最終的には、複数のドメイン名を1つのUDRP(統一ドメイン名紛争処理方針)手続きにまとめる作業が遥かに容易になります。

 

さらに技術的なメリットとして、レジストリからレジストラへの照会メカニズム(通称「ブートストラッピング」)が確立されました。つまり、レジストリへの問い合わせはレジストラに照会され、そのレジストラから信頼の置けるデータが戻されます。これは現在、登録者情報を保管していない「シン」レジストリに該当します。

 

また、RDAPには、国際化対応、安全なデータ送信、また、将来的な政策によって許可または義務付けられる場合に「アクセス権の分化」に対応するための技術的機能が加わるなど、ブランド所有者にとってうれしいメリットもあります。このアクセス権の分化は、EPDPフェーズ2ポリシー策定作業の結果次第で、将来的に登録者情報のSystem for Standardized Access/Disclosure(アクセス/開示標準化システムを意味し、Unified Access Model(アクセス統一モデル)、Standardized Access Model(アクセス標準化モデル)、またはAccreditation and Access Model(認証とアクセスモデル)ともいう)を実現するための技術基盤になる可能性があります。

 

ブランドオーナーがやるべきこと

43番ポートを使用したWHOISプロトコルの廃止後、現在WHOISデータを取り扱っている組織や個人は、RDAPクライアントを構築するか、既存のクライアントを使ってRDAPデータにアクセスする必要があります。一部のブラウザはすでに、RDAPの出力を人間に分かりやすい形式にパースしています。参考までに、Firefoxブラウザでhttps://rdap.markmonitor.com/rdap/domain/markmonitor.orgをご覧下さい。

 

RDAPコンプライアンスがレジストリやレジストラの責任となったため、ドメイン名登録者としてのブランド所有者が、自身の登録者情報に何らかの対応を行う必要はありません。ただし、IANAレジストラリストから、お使いのレジストラがRDAPサーバーアドレスを発行済みであるか検討し、契約義務を準拠の上、適切に新プロトコルに従っていることを確認することができます。

 

MarkMonitorのシニアドメインプロダクトマネージャーであるジャスティン・マック(Justin Mack)は、引き続きICANN RDAPパイロットグループに参加し、今回のドメイン名システムに関する重要な変更のために貢献しています。このワーキンググループは、コミュニティの利益のため、レジストリとレジストラがポリシーの実現に向けて協力している証といえるでしょう。

 

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