Dato-DXd
Datopotamab deruxtecan
HRポジティブ/HER2ネガティブおよびトリプルネガティブの両方の乳がんおよび非小細胞肺がん(NSCLC)の治療薬としてGilead Sciences IncのTRODELVY®に次いで2番目に市場に登場したdatopotamab deruxtecanは、クラス最高のTROP2標的抗体薬物複合体(ADC)となる可能性があります。アストラゼネカと第一三共の提携は、NSCLCおよび乳がんに焦点を当てたアストラゼネカの戦略と、第一三共独自のDXd ADC技術との統合を可能にしています。
datopotamab deruxtecanは、単剤療法またはIMFINZI®(アストラゼネカ)との併用療法として、早期および転移性症例の1stライン治療を含む様々なトリプルネガティブ乳がん集団で適応拡大も期待されています。
NSCLCでは、datopotamab deruxtecanが、actionableな遺伝子変異のない前治療歴のある転移性NSCLCに対して最初の承認を得られると期待しています。このADCは、第3相AVANZAR試験が良好であれば、1stライン治療(IMFINZIおよび化学療法との併用)の適応拡大が得られる可能性があります。
Datopotamab deruxtecan 詳細情報
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アストラゼネカ、第一三共
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TROP2標的ADC
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転移性NSCLCまたは転移性HRポジティブ/HERネガティブ乳がんの治療を目的とした3週間ごとの静脈内投与
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卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、SCLC、結腸直腸がん、膀胱がん、胃がん、胆道がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、尿路移行上皮がん、HER2ネガティブ胃食道がん、食道がんおよび扁平上皮がんの治療薬としても評価が行われています
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約16.8万人: 2023年におけるG7市場の治療歴のある転移性HRポジティブ/HER2ネガティブ乳がんの新規症例数
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約8.6万人:2023年におけるG7市場の早期で未治療の転移性トリプルネガティブ乳がんの新規症例数
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約32.9万人:2023年におけるG7市場の治療歴のある転移性NSCLCの新規症例数
なぜDrug to Watchなのか?
TROP2は、NSCLCを含む上皮がん細胞に高発現している一方(80%超)健康なヒト組織での発現が限られているという、抗体医薬の標的分子として魅力的な性質を有しています。HRポジティブ/HERネガティブ乳がんおよびNSCLCに関して個別に実施された、合計2試験の極めて重要な第3相試験からは、肯定的な結果が報告されています。
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TROPION-Breast01試験では、内分泌療法および1~2ラインの化学療法による治療歴を有する、手術不能または転移性のHRポジティブ/HER低発現またはネガティブ(IHC 0、IHC 1+ またはIHC 2+/ISH-)乳がん患者において、datopotamab deruxtecanと治験担当医師が選択した化学療法を比較しました。
- 疾患進行または死亡のリスクが37%低下(化学療法との比較)
- 無増悪生存期間(PFS)の中央値が6.9ヵ月(化学療法では4.9ヵ月)
- 36.4%の奏効率(ORR)(化学療法では22.9%)
- 全生存期間(OS:デュアルプライマリーエンドポイント)の評価は継続中
- グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)が患者の21%に発現(化学療法では45%)
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TROION-Lung01試験では、1ライン以上の前治療歴(免疫療法、化学療法、および該当する場合はドライバー変異に対する標的療法を含む)を有する転移性NSCLC患者において、datopotamab deruxtecanと現在の標準治療であるドセタキセルとを比較しました。
- 疾患進行または死亡のリスクが25%低下(ドセタキセルとの比較)
- PFSの中央値が4.4ヵ月(ドセタキセルでは3.7ヵ月)
- 26%のORR(ドセタキセルでは13%)
- datopotamab deruxtecanによるOS中央値12.4ヵ月(ドセタキセルでは11.0ヵ月)、死亡リスクの10%減少に相当。
- グレード3以上のTRAEが患者の25%に発現(化学療法では41%
アストラゼネカでは、datopotamab deruxtecanによる治療が最も有効になると思われる患者の同定に役立つ可能性のある診断検査の研究も行っています。さらに、以下の第3相臨床試験では、datopotamab deruxtecanの適応拡大の可能性が評価されている:
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TROPION-Breast02:PD-1/PD-L1阻害剤治療の候補とならない局所再発手術不能または転移性トリプルネガティブ乳がん患者において、datopotamab deruxtecanを治験責任医師が選択した化学療法と比較。
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TROPION-Breast03:ネオアジュバント療法後に浸潤性病変が残存する早期(ステージⅠ~Ⅲ)のトリプルネガティブ乳がん患者を対象 に、datopotamab deruxtecanとdurvalumabの併用療法を治験責任医師が選択した化学療法と比較。
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TROPION-Breast04: 前治療歴のないトリプルネガティブまたは HR-low/HR2-ネガ ティブ乳がん患者を対象に、datopotamab deruxtecan+durvalumab療法後にdurvalumab術後補助療法(化学療法あり/なし)を行う群と、ペムブロリズマブ+化学療法後 にペムブロリズマブ術後補助療法)化学療法あり/なし)を行う群を比較。
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TROPION-Breast05:PD-L1陽性の局所再発手術不能または転移性トリプルネガティブ乳がん患者において、datopotamab deruxtecan(durvalumab併用あり/なし)の群を、治験責任医師が選択した化学療法とペムブロリズマブの併用療法群と比較。
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AVANZAR:actionableな遺伝子変異のない進行性NSCLC患者の1stライン治療としてdatopotamab deruxtecanとdurvalumabおよびカルボプラチンを併用。
審査・承認状況
転移性乳癌
上市予測:
- 2025年: 米国、欧州諸国、日本、韓国
- 2026年: 中国本土
- 2030年: シンガポール
NSCLC
上市予測:
- 2025年: 米国、欧州諸国、日本、中国本土、韓国、シンガポール
Datopotamab deruxtecanは乳がんおよびNSCLC市場にどのような影響を与えるのか?
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HRポジティブ/HERネガティブ乳がん
- HRポジティブ/HERネガティブ乳がんは最も一般的なサブタイプであり、全症例の約60~75%を占めます。
- Data opotamab deruxtecanは、内分泌療法に耐性を獲得し、転移性疾患に対して少なくとも1つの化学療法ラインを受けている患者に対する治療として、3rdライン治療以降で最も多く使用されると予想されます。このような設定において、Data opotamab deruxtecanは、ENHERTU®(第一三共;患者の約40%を占める非HER2低値患者)の投与対象とならない患者の治療においてTRODELVYと競合することになります。
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トリプルネガティブ乳がん
- Datopotamab deruxtecanは、早期および転移性トリプルネガティブ乳がんの両方に位置づけられます。この承認により、免疫療法と化学療法による現在の治療から患者シェアを奪うことが予想されています。
- Datopotamab deruxtecanは、いずれの治療ステージにおいてもTRODELVYとの激しい競争に直面することになると予想されます
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NSCLC:
- NSCLCに関しては、datotamab deruxtecanは、確立された薬剤クラス(EGFR阻害薬、免疫チェックポイント阻害薬、血管新生阻害薬など)および新規治療薬(CD73-、NKG2A-、HER3-およびTROP2標的薬など)を含む最も混み合った薬剤開発パイプラインに参入することになります。
- Datotamab deruxtecanは当初、少なくとも免疫療法と化学療法に失敗した転移性NSCLC患者に対する新しい治療薬として位置づけられます。現状このような患者群には明確な後続治療が無く、アンメットニーズが存在します。その点で、新規作用機序を有する有効な治療薬を提供することは、処方者にとって魅力的であると思われます。
datopotamab deruxtecanはどのような治療上のギャップを埋めるのか?
内分泌抵抗性の転移性HRポジティブ/HERネガティブ疾患の管理には、化学療法の連続レジメンが広く利用されていますが、化学療法は奏効率の低さや毒性のため、このような状況ではアンメットニーズが残っています。Datotamab deruxtecanは、化学療法と比較して有効性と安全性の両方が改善することが示されています。
トリプルネガティブ乳がんでは、転移性乳がんに対する現在の治療法の有効性が限られていること、早期治癒治療後の再発率が高いことから、治療選択肢の改善に対するアンメットニーズが高くなっています。Datotamab deruxtecanは、単剤療法または免疫療法との併用療法として、このサブタイプの乳がん患者の転帰を改善することが期待されます。
治療歴のある転移性NSCLCに対する有効な治療法を含め、NSCLC治療には依然として満たされていないニーズが多く存在します。NSCLCの治療アルゴリズムは急速に進化しており、後続の治療ラインへの使用が承認された薬剤を1stライン治療薬として使用する適応拡大が行われるようになっています。これにより1stライン治療における患者反応が改善されますが、これらの患者の疾患が進行した場合に利用可能な選択肢が低減するため、後続治療のための治療選択肢を増大させることが早急に必要とされています。
ブロックバスターとなるために超えるべきハードルは?
datopotamab deruxtecanは、HRポジティブ/HERネガティブ乳がんおよびNSCLCの両分野において、様々な薬剤との厳しい競争に直面する可能性が高いと予想されています。
HRポジティブ/HERネガティブ乳がんの場合、既存薬(内分泌療法、アロマターゼ阻害薬、経口選択的エストロゲン受容体分解薬[SERDs]など)や新規治療薬(他のTROP2阻害薬、免疫チェックポイント阻害薬、PARP阻害薬、ワクチンなど)との競合が、薬剤の上市、ひいては販売の可能性における大きな障害となります。転移性HRポジティブ/HERネガティブ乳がんに対しては、内分泌抵抗性に対処する目的で複数の新規薬剤クラスが開発されています。新規のPI3K/ACT/mTOR阻害剤やER標的療法を含むこれらの新規薬剤は、datopotamab deruxtecanを含むADCの使用を後期治療ラインに押し上げる下げる可能性があります。加えて、ADCの連続使用(例えば、ENHERTUによる治療後のdatopotamab deruxtecanの使用)の有効性は不確実であり、ENHERTUによる治療後のTROP2剤の使用を妨げる可能性があります。多剤併用療法の市場参入により、治療ライン間の治療順序を最適化する必要性が高まっており、医師は、一次治療後の最良の治療順序を決定することに困難を感じるかもしれません。
トリプルネガティブ乳がんでは、datopotamab deruxtecanは、このクラスで最初に上市されたという利点を持つTRODELVYとの激しい競争に直面すると予想されます。
NSCLCに関しても、確立された治療薬(免疫チェックポイント阻害薬、モノクローナル抗体など)および新規治療薬(抗体薬物複合体など)との激しい競争を克服する必要があります。転移性NSCLCの一次治療では、バイオマーカーの状態に応じて異なる治療法を選択する例が増えてきており、ドライバー変異のない患者では免疫化学療法を併用する治療が標準治療となっています。大きな収益が見込める一方、競争の激しいこの市場にdatopotamab deruxtecanが食い込んでいくためには、既存の併用療法に同剤を追加することで説得力のある有効性の改善(および良好なベネフィットリスクプロファイル)が得られることを示す必要があります。
$2.70B
90%
医薬品のタイムラインと開発成功確率
出典:Cortellis Competitive Intelligence、医薬品タイムライン と開発成功確率予測日 2023年11月3日