CagriSema
cagrilintide + semaglutide
CagriSemaは、セマグルチドに長時間作用型アミリンアナログであるカルグリリンチドを加えることで、肥満および2型糖尿病のいずれに対してもセマグルチド(OZEMPIC/WEGOVY ®)およびチルゼパチド(MOUNJARO/ZEPBUND ®)よりも優れた有効性が期待されます。この次世代GLP-1製剤では、食後の膵臓β細胞からのインスリン分泌促進および食欲低下のための胃排出遅延などのGLP-1の既知の利点と、腸管でのグルコースの吸収遅延および食後の肝グルコース放出の遅延などのアミリンの活性が組み合わされています。承認されれば、CagriSemaは肥満およびT2DM市場で初めてのFDCアミリンと GLP-1 RAの配合剤となります。

CagriSeman一覧
- Novo Nordisk
- GLP-1 RA(セマグルチド)と長時間作用型アミリンアナログ(カグリチド)の固定用量配合剤(FDC)
- 肥満およびT2DM治療のための週1回皮下投与
- 約332万件の体重過多および肥満の薬物治療が2024年のG7市場において実施されています
- 約4540万件のT2DM薬物治療が2024年のG7市場において実施されています
なぜDrug to Watchなのか?
肥満およびT2DMは広範に見られる疾患であり、主に心血管系疾患(CVD)という形で世界中において高い罹患率および死亡率の原因となっています。肥満およびT2DMの治療では、GLP-1 RAに代表される、インクレチンホルモンをベースとする治療薬が好ましい選択肢となってきています。さらに、これらの薬剤が心血管系および腎臓にも有用な可能性があることを示唆する臨床エビデンスも現れています。
T2DMを有するBMI ≥27.0 kg/m2の患者におけるCagriSemaの第2相臨床試験からは、週1回のFDC皮下投与による有意な体重減少が示されています。
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CagriSema vs カグリリンチド vs セマグルチド(32週間)
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体重減少: 15.6% vs 8.1% vs 5.1%
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CagriSemaの忍容性は良好でした。
肥満に関する第3相臨床試験が現在進行中であり、CagriSemaの用量(2.4 mg)は肥満に対するWEGOVYの用量と同一であり、T2DMに対するOZEMPICの用量(0.5 mg、1 mg、2 mg)より高用量です。:
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REDEFINE 1 : BMI ≥27.0 kg/m2で体重関連の併存疾患(高血圧、脂質異常、睡眠時無呼吸症、CVDなど)を1つ以上有する18歳以上の成人患者
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CagriSema週1回皮下投与 vs セマグルチド皮下投与 vs カグリリンチド皮下投与 vs プラセボ(68週間)
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主要評価項目:
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プラセボで調整したベースラインからの体重の平均変化
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≥5%の体重減少を達成した被験者の割合
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体重の減少:22.7% vs 16.1% vs 11.8% vs 2.3%
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体重の減少25%以上の割合:40.4% vs 16.2% vs 6.0% vs 0.9%
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最高用量における割合:57.3% vs 70.2% vs 82.5%
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CagriSemaの忍容性が高かった。
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REDEFINE 2: BMI ≥27.0 kg/m2 の18歳以上のT2DM成人患者
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CagriSema週1回皮下投与 vs セマグルチド皮下投与 および プラセボ(68週間)
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主要評価項目:
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プラセボで調整したベースラインからの体重の平均変化
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≥5%の体重減少を達成した被験者の割合
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完了予定:2025年1月
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REDEFINE 3:T2DMの有無を問わず、BMI ≥27.0 kg/m2でCVDが確認されている18歳以上の成人患者
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CagriSema週1回皮下投与 vs プラセボ(163週間)
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主要評価項目:
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MACE-3(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中)の初回発現までの期間
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完了予定:2027年5月
NDA申請は、REDEFINE 1およびREDEFINE 2の結果によって裏付けられると予想されます.
T2DM患者を対象とした以下の試験も進行中であり、試験内および試験間でCagriSemaの用量は異なります。
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REIMAGINE 1:18歳以上のT2DM成人患者
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CagriSemaを16週間の用量漸増期間および24週間の維持期間において週1回皮下投与し、プラセボと比較
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主要評価項目:
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HbA1cの変化
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完了予定:2025年12月
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REIMAGINE 2:SGLT2阻害薬の併用または非併用下でメトホルミンによって十分にコントロールされていない18歳以上のT2DM成人患者
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CagriSema週1回皮下投与 vs セマグルチド皮下投与 vs カグリリンチド皮下投与 vs プラセボ(68週間)
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主要評価項目:
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HbA1cの変化
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体重の相対的変化
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完了予定:2026年5月
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REIMAGINE 3:メトホルミンの併用または非併用下でインスリンの1日1回投与を受けている18歳以上のT2DM成人患者
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CagriSemaを8週間の用量漸増期間および32週間の維持期間において週1回皮下投与し、プラセボ(40週間)と比較
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主要評価項目:
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HbA1cの変化
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完了予定:2025年11月
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REIMAGINE 5:メトホルミン、SGLT2阻害薬またはそれらの併用によって十分にコントロールされていない18歳以上のT2DM成人患者
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CagriSema週1回皮下投与(8週間の用量漸増期間および52週間の維持期間)をチルゼパチド週1回皮下投与(4週間の用量漸増期間および56週間の維持期間)と比較
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主要評価項目:
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HbA1cの変化
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体重の相対的変化
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完了予定:2026年8月
審査・承認状況
上市年(実績、予測):
- 2026年: 米国(肥満)
- 2027年:EU(肥満)、日本(肥満)、中国本土(肥満とおよびT2DM)
- 2028年:EU(T2DM)、日本(T2DM)、英国(T2DM)、米国(T2DM)
2026年に特許存続期間が順次満了すると推定される
Drug Timeline & Success Rates


出典: Cortellis Competitive Intelligence, Drug Timeline & Success Rates Prediction current as of October 31, 2024
CagriSemaは肥満とT2DMの市場にどのような影響を与えるのか?
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肥満治療薬市場は大幅に拡大する見通しであり、ブランド薬、ジェネリック薬および適応外薬の売上高は2022年の28億ドルから2032年には220億ドルを超え、CAGR(年平均成長率)は23%となると予測されます。
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米国およびEUにおいて、GLP-1は2022年の市場売上高のそれぞれ約73%および76%を占めており、市場をリードしています。
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T2DM市場は拡大する見通しであり、2022年に1020億ドルであった主要市場売上高が2032年には1270億ドルを超えると予測されます。新規治療薬の上市と普及、ブランド薬(GLP-1 RA製剤など)の使用拡大および薬物治療人口の増加が、この力強い成長の原動力となると考えられます。しかし、非ブランド薬の市場参入により、多くの主要T2DMブランド薬の市場売上高に下方圧力がかかると予想されます。
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GLP-1RA 製品の売上高は、2032年まで大きく増加する見通しです。これらのクラスの薬剤は、主要市場において2032年には総売上高が740億ドルを超えると予測されており、予測期間を通して最も魅力的な薬剤であり続けると思われます
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現在GLP-1 RAの売上はWEGOVYがリードしていますが、ZEPBOUNDおよびCagriSemaが、より良好な有効性と競争力のある価格によって、WEGOVYの患者シェアを侵食すると予測されます。ZEPBOUNDおよびCagriSemaも互いに競合し、互いの売上を抑制すると考えられます。
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有効性の高い薬剤の高価格に加えて、肥満症やT2DMの罹患率および治療率の増加、より使いやすい薬剤の出現、肥満症およびT2DM以外の疾患アウトカムの改善に基づくアクセスや償還の制約緩和などが引き続き市場を成長させていくと考えられます。
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肥満症およびT2DMの治療パイプラインでは競争が非常に激しくなっており、市場をリードする企業が開発している単剤および配合剤(インスリン イコデク[IcoSema])の新規GLP-1 RAが、パイプラインの初期段階および後期段階に存在しています。これによって、この領域の競争は将来ますます加速すると考えられます。
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2剤配合RAおよび3剤配合RAは、既に市販されているGLP-1 RAおよびGLP-1/GIP RAと同等またはより低い価格で、より優れた有効性、同等の安全性プロファイルおよび忍容性プロファイルを提供できます。
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血糖の管理に加えて、CVD、腎機能および体重減少にも有効であることが、GLP-1 RAの普及を促進しており、CagriSemaなど今後数年間に発売されるいくつかの新薬の償還に有利に働くと同時に、差別化につながると考えられます。
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CagriSemaは、肥満およびT2DMへの使用が十分に確立されているセマグルチドを背景とすることから、その恩恵を受けることが期待されます。
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クラリベイトがインタビューしたKOLによると、T2DMに関しては、十分に確立されたGLP-1 RAが存在するため、既存の薬物クラスの新規治療薬は差別化が困難になる可能性があります。GLP-1 RAおよびGLP-1/GIP RAの使用は、主要市場全体において、メグリチニドやチアゾリジンジオンなどその他のクラスの糖尿病薬を置き換えつつあります。
CagriSemaはどのような治療上のギャップを埋めるのか?
肥満やT2DMのほとんどの患者は、生活習慣および行動の改善では長期的な有効性が不十分です。一方、肥満外科治療は有効ですが、公衆衛生上の懸念としてのこれらの疾患の対処に必要な規模での実施は現実的ではありません。現在の治療薬法の限られた有効性およびGLP-1 RAの消化管への副作用が、多くの場合、治療中止、体重増加および血糖コントロール不良につながっています。さらに、T2DMでは網膜症、神経障害および腎症を含む微小血管合併症の発生も懸念されますが、これらは長期にわたり使用されてきた主な治療法では対処されていません。GLP-1およびGLP-1/GIP RAは、肥満およびT2DMに対する有効性が期待されますが、米国などの市場では高額であり、CVDのリスクが存在する場合以外は保険適用が限られています。肥満症やT2DMに対してより高い有効性が期待されるCagriSemaおよびその他の2剤配合GLP-1 RAや3剤配合GLP-1 RAの上市により、保険適用への障壁が改善され、より大規模な患者集団がこれらの薬剤を服用できるようになる可能性があります。
ブロックバスターとなるために超えるべきハードルは?
現在までに承認されている唯一のアミリンアナログはSYMLIN® (酢酸プラムリンチド; AstraZeneca)であり、T2DMに対して米国のみ使用可能となっています。重度の低血糖リスクなどの安全性の懸念から、EUおよび日本では承認されていません。CagriSemaの第3相臨床試験プログラムでは、承認および医師の肯定的な認識を促すために、カグリリンチドに関連する安全性の懸念を軽減する必要があります。CagriSemaの安全性を裏付けるデータが存在するとしても、医師および患者は、より十分に確立されており認知度の高いGLP-1 RAおよびGLP-1/GIP RAを選択する可能性があります。また、肥満およびT2DMに関する第3相プログラムでは、体重減少およびHbA1c 管理に関する同等の有効性が確立される必要があります。さらに、CagriSemaは、その有望な有効性プロファイルにもかかわらず、現在の厳しい償還環境、高額な自己負担コストおよびアミリンアナログに対する医師の認知度熟知度の低さのために、売上が制限される可能性があります。