AWIQLI
LAI 287; insulin icodec
オーストラリア、カナダ、EU、中国本土、日本で上市されたAWIQLI ®は、初めての週1回皮下投与インスリン製剤です。この投与レジメンには、現在の基礎インスリン1日1回投与レジメンと比較して、1型および2型糖尿病(T1DMおよびT2DM)に対するインスリン治療に伴う投与負担を軽減することができるという明らかな利点があります。

AWIQLI一覧
- Novo Nordisk
- 持効型基礎インスリンアナログ
- T1DMおよびT2DM治療のための週1回皮下投与
- 約180万人が2023年にG7市場でT1DMと診断されています
- 約1060万人のT2DM患者が2023年にインスリン治療を受けています
なぜDrug to Watchなのか?
AWIQLIはT1DMおよびT2DMに対する週1回皮下投与の基礎インスリンアナログであり、半減期は約8日間です。さらに、Novo Nordiskは、AWIQLIとともに使用するモバイルアプリのDoseGuideを開発し、各患者が過去の投与量および血糖値に基づいて最適なインスリン投与量を容易に把握できるようにしています。しかし、米国での発売は内分泌/代謝薬・諮問委員会(Endocrinologic and Metabolic Drugs Advisory Committee)からの勧告に基づいたFDAからのCRL(審査完了報告通知、Complete Response Letter)によって遅れています。CRLでは、T1DM治療薬としての製造工程およびデータに関する要求事項が提示されています。同社はFDAと緊密に連携してこの問題に対処していますが、2024年中にすべての要件をクリアできる見込みはありません。
その他の国および地域では、第3相臨床試験ONWARDSプログラムのデータに基づいて承認されていますが、このプログラムでは、AWIQLIにおいて他のインスリンアナログと比較して有効性および安全性関して良好なデータが示されおり、低血糖の発現率に関しては統計学的に有意な差は示されていません。T2DM患者を対象とした臨床試験には、AWIQLIを処方される可能性の高いすべての主要グループが含まれています。
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ONWARDS 1試験:インスリン治療歴のないT2DM成人患者
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AWIQLI(週1回皮下投与)とインスリングラルギン(1日1回皮下投与)の比較(いずれも基礎糖尿病治療との併用)
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52週目におけるHbA1c のベースラインからの低下: AWIQLI で-1.55%に対してインスリングラルギンで-1.35% (統計学的に有意性あり)
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AWIQLI投与群では、インスリングラルギン群と比較して、レベル2または3の低血糖を報告することなくでHbA1cの目標値7%未満を達成した被験者の割合が高くなっていました
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臨床的に問題となる低血糖または重大なの低血糖の患者あたあたりの年間発現件数はAWIQLIで0.30、インスリングラルギンで0.16でした(統計学的有意性なし)
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ONWARDS 2試験:インスリン治療歴のあるT2DM成人患者
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AWIQLI(週1回皮下投与)とインスリンデグルデク(1日1回皮下投与)の比較(いずれもインスリンを除く糖尿病治療薬との併用)
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26週目におけるHbA1c のベースラインからの低下: AWIQLI で-0.93%に対してインスリンデグルデクで-0.71% (統計学的に有意性あり)
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臨床的に問題となる低血糖または重大な低血糖の患者あたりの年間発現数はAWIQLIで0.73、インスリンデグルデクで0.27でした(統計学的有意性なし)
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ONWARDS 3試験:インスリン治療歴のないT2DM成人患者
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AWIQLI(週1回皮下投与)とインスリンデグルデク(1日1回皮下投与)の比較(いずれもインスリンを除く糖尿病治療薬との併用)
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26週目におけるHbA1c のベースラインからの低下: AWIQLI で-1.57%に対してインスリンデグルデクで-1.36% (統計学的に有意性あり)
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臨床的に問題となる低血糖、または重大な低血糖の患者あたりの年間発現件数はAWIQLIで0.31、インスリンデグルデクで0.15でした(統計学的有意性なし)
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ONWARDS 4試験:基礎-追加インスリン療法を受けている成人T2DM患者
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AWIQLI(週1回皮下投与)とインスリンアスパルト(1日2~4回皮下投与)の併用を、インスリングラルギン(1日1回皮下投与)とインスリンアスパルト(1日2~4回皮下投与)の併用と比較しました
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26週目におけるHbA1c のベースラインからの低下: AWIQLI で-1.16%に対してインスリングラルギンで-1.18% (統計学的有意性あり)
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臨床的に問題となる低血糖、または重大な低血糖の患者あたりの年間発現件数はAWIQLIで5.64、インスリングラルギンで5.62でした(統計学的有意性なし)
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ONWARDS 5試験:インスリン治療歴のないT2DM成人患者
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AWIQLI(週1回皮下投与;DoseGuideアプリとともに使用)とインスリングラルギン(1日1回皮下投与)の比較
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52週目におけるHbA1c のベースラインからの低下: AWIQLI で-1.68%に対してインスリングラルギンで-1.31% (統計学的に有意な差)
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臨床的に問題となる低血糖、または重大な低血糖の患者あたりの年間発現件数はAWIQLIで0.19、インスリングラルギンで0.14でした(統計学的有意性なし)
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ONWARDS 6試験:T1DM成人患者
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AWIQLI(週1回皮下投与)とインスリンアスパルト(1日3回食事時に皮下投与)の併用を、インスリンデグルデク(1日1回皮下投与)とインスリンアスパルト(1日3回食事時に皮下投与)の併用と比較しました
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26週目におけるHbA1c のベースラインからの低下: AWIQLI で-0.47%に対してインスリンデグルデクで-0.51%
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臨床的に問題となる低血糖、または重大な低血糖の患者あたりの年間発現件数はAWIQLIで19.93、インスリンデグルデクで10.37でした(統計学的有意性あり))
第2相臨床試験ではAWIQLI群において低血糖発現率がインスリングラルギン群よりも高くなっていました。しかし、これらの第3相臨床試験の結果からは、T2DM患者において発現件数が対照群と同程度であることが示されています。
審査・承認状況
2023年4月
- BLA提出:米国FDA
- MAA提出:EU EMA
2023年8月
- NDA提出:日本PMDA
2024年5月
- 承認:EU EMA
2024年6月
- 承認:日本PMDA、中国本土NMPA
2024年7月
- CRL:米国FDA
上市年(実績、予測):
- 2024年:EU、日本、中国本土 (2型糖尿病のみ)、英国
- 2025年:米国
2023年に特許存続期間が順次満了すると推定される
Drug Timeline & Success Rates


出典: Cortellis Competitive Intelligence, Drug Timeline & Success Rates Prediction current as of October 31, 2024
AWIQLIはT1DMおよびT2DMの市場にどのような影響を与えるのか?
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肥満率の上昇、心血管疾患発症リスクの増加や高齢化などの人口動態からは、T2DM市場の成長が予想されます。
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T2DMの治療薬パイプラインには極めて多くの薬剤が存在し、150を超える薬剤の臨床開発が進められています。また、第3相臨床試験パイプラインの大半はGLP-1 RAが占めており、より利便性の高い経口投与オプション(Eli Lilly and Coのオルフォグリプロンなど)、GLP-1配合剤(Novo Nordiskのインスリンイコデクとセマグルチドの配合剤である IcoSema、Novo Nordiskのカグリリンチドとセマグルチドの配合剤であるCagriSemaなど)およびその他のインスリンアナログ(Eli Lilly and Coの インスリンエフシトラアルファ)が含まれます。
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T1DMではインスリン補充療法が依然として治療の第一選択肢であるため、週1回投与のAWIQLIは推奨されると考えられます。
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T1DMおよびT2DMのいずれにおいてもインスリン市場はすでに十分に確立されており、インスリン製剤の改善が検討されています。
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AWIQLIは、市場初登場の週1回皮下投与インスリン製剤として、Eli Lilly and Coの週1回投与のインスリンエフシトラアルファに対して優位性を有することが予測されます。
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薬物治療人口の増加と連動して、AWIQLIが主要市場における長時間作用型インスリンの売上減少を部分的に相殺することで、市場は2022年の170億ドルから2032年には230億ドルに成長すると予測されます。インスリン療法を必要とする患者の大半が1日1回投与の長時間作用型インスリンを処方されることになることから、総体的にみて、AWIQLIの上市によりインスリン市場の限定的な拡大につながると考えられます。
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しかし、インスリングラルギンおよびインスリンデグルデクなどのインスリンアナログの非ブランド製品、バイオシミラーまたは互換性のある製品の利用可能性、インスリンポンプの使用の増加およびGLP-1 RA製品の多用などにより、T2DM患者におけるインスリン治療の開始がさらに遅れることがAWIQLIにとっての課題となります。
AWIQLIはどのような治療上のギャップを埋めるのか?
AWIQLIの上市は、インスリン注射に伴う投与負担を顕著に軽減することで多くの患者のQOLを向上させることが期待されますが、その影響はT2DM患者よりもT1DM患者において顕著となります。このことが間接的に良好な治療アドヒアランスにつながる可能性があります。
ブロックバスターとなるために超えるべきハードルは?
週1回インスリン投与の安全性に関する不確実性が商業的成功の障壁の一つとなります。特にT2DM患者では、低血糖のリスクが懸念されます。さらに、予定外の投与、週1回という低頻度での投与における用量調整や用量漸増に関する理解不足なども懸念されます。インスリンの週1回投与における有効性および安全性に関する信頼性を高めるためには、長期のリアルワールドデータの存在が必要です。他の治療薬との競合もAWIQLI市場を脅かす可能性があります。