世界各地の商標庁では現在、国外からの出願件数と国内からの出願件数とのバランスに有意な変化が生じています。商標の国内外の出願の流れ(出願動向)のパターンは、ブランドの国外への拡大状況、地域市場の発展状況、競争圧力が高まっている国・地域を理解する有益な知見となります。
このブログでは、「商標出願の動向」レポートの内容、およびSAEGISプラットフォームのデータを用いて、主要管轄区域において商標出願動向がどのように変化しているか、知財チームがこの情報をクリアランス、モニタリング、ポートフォリオの判断材料としてどう活用していけばよいかを考察します。
ブランド所有者と法務チームの世界における商標保護活動の方向性を決める、4つの主な出願動向を以下にご紹介します。
1. 米国は、依然として世界の商標出願の中心地である一方、国外への出願は横ばい傾向である

出典:商標出願の動向 2025
米国は、国外からの出願件数が引き続き世界最多となっています。総数に変動はあるものの、国外からの出願が国外への出願を常に上回っています。
米国への出願件数が特に多いのは、依然として中国本土、英国、ドイツで、優先進出市場としての米国の地位は一層強固なものになっています。
一方、米国から欧州やアジア市場への出願は、何年か増加が続いた後は横ばい傾向を示しています。この差は、世界のブランドが国際的な出願戦略を調整し、保護に取り組む管轄区域を厳選していることを示唆しています。
この動向が示すこと
- 米国は、依然としてブランド保護競争の主戦場となっている。
- 世界の出願人は、ブランド拡大を支えるために、米国での早期保護に引き続き注力している。
- 米国から国外への出願件数の横ばい化は、国際的なポートフォリオ計画においてターゲットの絞り込みが進んでいることが背景にある。
2. カナダと英国は、世界の出願動向の調整地となっている
カナダと英国は、依然として国外からの主要な出願先であり、国外からの出願が国外への出願を大幅に上回る傾向にあります。両国とも、北米や欧州に進出する世界のブランドにとっての戦略拠点となっています。
カナダは、消費者向け区分に関する国外からの出願が国外への出願に比べて著しく多く、早期テスト市場の役割を帯びています。英国も同様の様相を呈しており、米国とEUから英国への出願はともに英国からの出願よりも多くなっています。
この動向が示すこと
- カナダと英国は引き続き、ブランド展開地域拡大の拠点となっている。
- 出願の担当者は、国内のさまざまな出願による競合が続くことを想定しておくべきである。
- クリアランス戦略に関して、世界各地からの出願を踏まえ、モニタリングの早期開始と対象拡大が必要になる可能性がある。
3. インドと中国本土とでは、国内出願と国外出願の動向が対照的である
インドは、依然として世界有数の国内主導型の管轄区域となっています。国内の出願人による出願が全出願の圧倒的大部分を常に占めており、大半の区分において、国外からの出願を上回っています。このように国内からの出願が優勢となっている背景には、インドのイノベーションエコシステムの成長加速と国内市場の成熟化があります。
中国本土は、インドとは逆の動きを見せています。国内からの出願が依然として優勢ではあるものの、技術、消費財を中心に複数の国際区分において、米国、韓国、欧州からの出願が増え続けています。
この動向が示すこと
- インドの出願環境は、国内優先の出願人にとっては競争がますます激しくなっている。
- インドへの進出を図る国外ブランドは、クリアランスとモニタリングを特に慎重に行う必要がある。
- 中国本土において国内外双方からの出願が増加し続けている状況は、同国が世界的な影響力を拡大している兆候と言える。
4. EUIPOは、引き続き国外出願効率化の牽引役となっている
欧州連合知的財産庁(EUIPO)は、1件の出願で27の市場での商標保護が可能になる独自の制度を有することから、依然として主要な商標出願先となっています。EU域外からの出願が域外への出願を上回る状況が続いており、一括保護制度の強みが表れています。
米国、英国、中国本土、日本などEU域外からの出願人は、域内全体での保護を目的にEUIPOに大きく依存しています。一方、EU域内の出願人が域外に出願する件数は相対的に少なくなっており、このことから、EUIPOがブランドの防御と拡大の両方の機能を果たしていることがうかがえます。
この動向が示すこと
- EUIPOは、複数の市場を一括保護できることから、依然として国際的な出願戦略の中心に据えられている。
- EUにおけるクリアランスでは、域外からの多種多様な出願全体を引き続き幅広くモニタリングする必要がある。
- 地域間でブランドを同時展開する際の足掛かりとなる管轄区域として、EUIPOが選択されるケースが増えつつある。
知財チームによる出願動向の知見の活用
出願動向のパターンから見えてくるのは、出願先だけではありません。市場に対する信頼、ブランドの優先拡大先、競合圧力がどう変化しているのか、そして、知財チームがこれらの知見をどう活用して、ポートフォリオについてデータに基づいた即応性の高い判断を下しているのかも物語っています。自社の知財戦略へのこうしたデータの活用法を4つご紹介します。
- 国外からの出願が多い管轄区域において早期クリアランスを優先的に実施する
米国、カナダ、EUなど、国外・域外からの出願が圧倒的に多い市場では、クリアランスとウォッチングの対象範囲を広げ、早期に実施することが求められます。 - 出願動向データを活用し、新興市場を特定する
東南アジア、インド、中東での国外からの出願増加は、これらの市場で競争が始まっており、早期参入が加速する可能性があることを示しています。 - 国内外の圧力を踏まえて出願計画を調整する
インドなど国内出願が圧倒的に多い管轄区域では、出願やモニタリング、リスク許容度に関して、米国やEUIPOなど国外出願が多い管轄区域とは別の戦略を策定することが必要になると思われます。 - 従来の出願アプローチから脱却し、実際の動向に合わせてポートフォリオを調整する
主要経済国では国外への出願度が変化しています。知財チームは、従来の出願アプローチから脱却し、商標保護が本当に必要な国・地域を改めて確認すべきです。
各管轄区域の出願動向が変化し続ける中、情報に基づいて迅速な判断を下すには、信頼できる最新の商標データと、それを実用化するツールの利用が不可欠です。
クラリベイトが出願動向に関するデータ主導の判断を支援
クラリベイトは、出願人の国籍、出願が増加している国・地域、競合圧力が生じている国・地域など、出願動向の変化を比類のないレベルでリアルタイムに可視化します。キュレーション済みの商標データ、ウォッチツール、明確性と迅速性を追及した分析機能により、知財チームはより迅速にリスク評価を行い、クリアランス判断を強化し、優先すべき市場をさらに自信を持って判断できます。
現在のポートフォリオやクライアント作業に出願動向インテリジェンスの活用をご検討の場合は、当社がお手伝いいたします。
CompuMarkツールは、出願動向の知見を活用してポートフォリオに関する実際のクリアランス判断をサポートします。機能をお試しになりたい場合は、担当者にご相談ください。
当ブログ記事は2026年1月20日にグローバル公開したものを日本語に翻訳再編集(一部追記を含む)したものです。オリジナルは原文(英語)をご参照ください。本資料の正式言語は英語であり、その内容・解釈は英語が優先します。