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脊髄性筋萎縮症(Spinal Muscular Atrophy)の疫学を理解する

脊髄性筋萎縮症(Spinal Muscular Atrophy)の疫学を理解する

脊髄性筋萎縮症(SMA)は、脊髄のα運動ニューロンが変性することによって進行性の筋力低下と筋萎縮を引き起こす遺伝性疾患です。クラリベイトは広範な疫学調査を実施し、さまざまな地域から有病データを収集し、直接データが得られない場合には類似集団(プロキシ集団)を用いて分析を行いました。私たちの目的は、遺伝子、医療体制、そして高額な治療へのアクセスを含む社会経済的要因がどのように世界のSMA有病率に影響を及ぼしているのかを明らかにすることでした。

地域ごとの差異

私たちのグローバル分析によると、SMAの診断有病率やサブタイプの分布は地域ごとに大きく異なります。ヨーロッパでは、オーストリアやスイスにおける薬物治療患者の割合を考慮しつつ、EU5か国のデータ平均を用いてSMAタイプ1および2の有病率を調整しました。LATAM(ラテンアメリカ)では、アルゼンチン、ブラジル、コロンビアなどの国々でさまざまなSMAサブタイプの有病率が報告されています。APAC(アジア太平洋)地域では、香港やシンガポールなどの高所得国と、インドネシアやベトナムといった低所得国とで有病率が異なっています。アフリカ、中東、アジア亜大陸では、エジプト、インド、サウジアラビアといった国々で、遺伝的特徴や医療体制、社会経済的要因の影響を受けた独自の有病率パターンがみられました。

有病率に影響を与える要因

  • 遺伝的要因:ハーディ・ワインベルグの法則

SMAは常染色体劣性遺伝形式をとる遺伝性疾患です。そのため、私たちはハーディ・ワインベルグの平衡という遺伝学の重要な原則に基づいて分析を行いました。これは、選択圧がなく、移動が最小限で、集団が大規模、突然変異がないという仮定のもと成立します。遺伝的背景が類似したプロキシ集団を選び、より正確な有病率の推定を目指しました。たとえば、ヨーロッパではオーストリア、ベルギー、スイスなどが遺伝的特徴が近い地域のプロキシとして用いられました。

  • 医療体制:重要な決定因子

医療体制が発展し、スクリーニングや検出率が高い地域ほど、SMAの有病率データが多く報告される傾向にあります。たとえば、サウジアラビアは中東諸国の中でより進んだ医療体制と高いスクリーニング・検出率を持っています。

SMA治療の革新は目覚ましく、現在二つの有効な治療法が存在しますが、それぞれ作用機序や投与方法が異なります。一つは髄腔内注射によるアンチセンスオリゴヌクレオチド製剤、もう一つは経口投与可能な低分子薬で、髄腔内注射が難しい患者にも適応できます。どちらの治療もSMN2遺伝子を標的とし、SMNタンパク質の産生を増やすことで筋肉や神経機能の改善を目指します。

さらに、SMN1遺伝子の正常コピーを運動ニューロン細胞に導入する遺伝子治療も開発されており、SMAの根本的原因にアプローチしています。この遺伝子治療は他の治療法と比べて高い効果を示し、SMA治療の新たな基準となっています。57件の研究を対象としたメタ分析では、遺伝子治療は95%の生存率を達成し、人工呼吸管理を必要とする患者数も大幅に減少しました。特に乳児においては運動機能や生存率の改善で他の治療法を上回っています。ただし、特に遺伝子治療の利用可能性は、北米やヨーロッパなど、手厚い償還制度がある地域で大きく左右されます。

  • 社会経済的要因:格差を埋めるために

所得水準はSMA治療へのアクセスを決定づける重要な要因であり、高所得地域と低所得地域の間には明確な差が生じています。豊かな国々では、確立した医療体制や患者レジストリによって診断率が高く、専門的なSMA治療へのアクセスも拡大しています。一方、低所得地域では医療資金の不足や神経筋疾患専門医の少なさ、高額な治療費が大きな障壁となっています。経済的な支援がなければ、多くの家族がクラウドファンディングなどの手段に頼って治療費を工面せざるを得ません。こうした経済格差は、SMAケアにおける重要な課題であり、タイムリーな診断と命を救う治療への公平なアクセスを実現するための取り組みが求められています。

多面的なアプローチの必要性

このように、遺伝子・医療体制・社会経済的要因が複雑に絡み合い、SMAの有病率を理解し対策するには多面的なアプローチが不可欠です。プロキシ集団や治療の可用性を考慮することで、SMAが世界にもたらす影響について貴重な洞察が得られます。

したがって、SMAは単なる遺伝性疾患ではなく、さまざまな要因が絡み合う「世界的なパズル」であることを覚えていてください。今後も研究と協力を続けることで、遺伝学、経済、医療アクセスがSMAの有病率や患者さんの生活にどのような影響を与えているのかを明らかにし、この難病と向き合う人々の暮らしをより良くしていくことができるでしょう。

SMAを含む実際の疫学データや分析手法の詳細については、Epidemiology Intelligenceプラットフォーム、または製品紹介ページをご覧ください。

(本記事は、シニア疫学者Alex Li医師・博士およびシニア・プリンシパルSTEMコンテンツアナリストShyama Ghosh博士によって執筆されました)

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