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アジアで進むAI教育の課題と6つのヒント

アジアで進むAI教育の課題と6つのヒント

近年、ニュースを通して「AI」という言葉を見かけない日はありません。大学においても、課題の取り組み・実験・論文執筆など、様々な場面で生成AI技術が活用されるようになりました。どのツールが実際に使えるのか、学生に伝えないといけないことは何か、教育現場での話題は絶えないはずです。では国内から視線を少し広げて、アジア全体の地域で見ると、AIの教育への導入に何か共通する課題やヒントになるような知見はあるのでしょうか?

この疑問に答えるため、クラリベイトのアカデミア&ガバメント事業部では、中国・インド・日本・マレーシア・シンガポール・韓国・台湾の7つの国と地域を対象に、AI政策とAI倫理教育の現状を2年にわたって調査し、今年3月に白書として発表しました。この記事では、白書のポイントをわかりやすくご紹介いたします。

アジア太平洋地域の多様性とつながり

アジア太平洋地域は、留学生の多さと多言語環境というユニークな特徴があります。国境を越えて学ぶ学生が多く、地域内で学んだ卒業生が研究やビジネスでもつながっているため、「AIを教育にどう統合するのが理想的か」を考えるうえで、互いに学ぶことができる大きな強みがあります。一方で、この地域は長年「言語の壁」で情報が阻まれてきました。政府の政策文書や大学の指針が、日本語や韓国語や中国語などの各国語のみで公開されることがあり、地域横断的な研究や、教育実践の共有があまり進んできませんでした。そこでクラリベイトでは、政策の分析や文献データを使った調査、国際ガイドラインの精査、専門家ヒアリングなど、複数の方法を組み合わせて、「アジア太平洋地域のAI教育の実情」を探りました。

責任あるAI利用のための課題

調査を進めると、アジア太平洋地域の高等教育機関が抱える課題が浮かび上がってきました。

国によってAIのリスクの捉え方が異なる

各国・地域の教育省が出版しているAIのガイドラインを比べると、「AIのリスク」として明記されている点に違いがありました。盗用や著作権侵害については、全ての地域でリスクとして認識されていましたが、AIへの過度な依存・サイバー攻撃への悪用・悪意ある誤情報の拡散などへの言及にはばらつきが見られました。留学生の多い大学では、このリスク認識の違いが思わぬ影響を及ぼすことがあります。

分野間でAI倫理教育の進み方に差がある

AI倫理のカリキュラムの研究は、医学部・工学部・教育学部を中心に各地域で進んでおり、論文の数が増えていますが、他の分野ではまだ限られています。大学が全学の取り組みとしてAI導入のためのポリシーや教育プログラムを検討する際、こうしたギャップが壁になることも考えられます。

AIモデルの「言語バイアス」は見過ごせない

既存の大規模言語モデル(LLM)の多くは英語圏のデータで学習されています。そのため、英語を公用語としない社会や、欧米と異なる文化をもつ地域では、とくに医療分野の出力に誤判断が含まれる懸念が指摘されています。

世代や立場でAIへの見え方が大きく違う

学生と教員、専門家と非専門家の間で、AIに対する印象や懸念の内容は異なっています。科学コミュニケーションや生涯学習により世代や立場を超えた対話の取り組みが求められています。

「グローバル・サウスの視点」が足りない

国際的なAI枠組みを策定する際、議論のなかに多様な文化的・言語的背景をもつ新興国の見解が反映されづらいことがあります。アジア諸国からの留学生が多い大学にとって、この視点は欠かせないものになるはずです。

教員育成や学際連携が追いついていない

AIやAI倫理に関わる分野は、工学だけでなく人文社会科学の研究の蓄積が進んでおり、大きな学際領域になっています。全分野からの最新の知見を取り入れて授業ができる教員や、研究者の連携が一大学だけではなかなか進まない現実があります。

白書がまとめた「6つの提言」

こうした課題を踏まえて、白書では大学や政策担当者に向けた以下の6つの提言を紹介しています。

  • 国際基準と地域文脈の両立
  • 教材とツールの地域ニーズへの適合
  • 生涯学習と世代間対話の促進
  • 文化的包摂性の確保
  • 教員育成と学際的連携の強化
  • アジアでの知見共有と模範事例の蓄積

これらの提言の詳細については、ぜひ白書をご覧ください。

図書館が果たす役割の重要性

誰もが生成AIを利用できるようになり、大学の教育そのものが大きく変わろうとしています。そのような中で、大学図書館は、学生と教員を「責任あるAI利用」へ導く中心的な役割を担っています。今回の白書では、大学がこれらの提言を制度やカリキュラムに落とし込む際に、クラリベイトが提供できるワークショップや研修プログラムについても紹介しています。アジアの多様性を理解して、お手本になる事例から互いに学び、実践を共有できるネットワークを築くことで、多様な学生によりよい学習環境を届けるための着実な一歩を踏み出すことができるはずです。

白書の入手と引用方法

この白書はクラリベイトのウェブサイトから入手できます。引用する場合は、以下の表記をご使用ください。

Tanaka, S., Guo, C., Man, G., Wang, J., Malar, K., Park, L., Rajan, S., & Sasidharan, S. (2026). AI education rooted in culture and integrity: Recommendations for the responsible use of AI in Asia-Pacific higher education, Clarivate.

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