
2025年
クラリベイト・アナリティクス・ジャパン株式会社
リード・ビジネス・ソリューション・コンサルタント 安藤 聡子
クラリベイトは、高被引用論文数の分析による日本の研究機関ランキングを発表しました。本分析は、後続の研究に大きな影響を与えている論文(高被引用論文)数をもとに、世界の中で日本が高い影響力を持っている研究分野において、国内で特に存在感のある研究機関を特定する試みです。
クラリベイトでは各研究分野における被引用数が世界の上位1%に入る、卓越した論文を高被引用論文と定義しています。高被引用論文は、影響力の強い研究者である高被引用論文著者の選定をはじめ、論文の卓越性を客観的にはかる指標として広く使用されています。
今回の分析で日本の高被引用論文の総数は、引き続き世界第12位でした。分野別では、10位以内では物理が5位、科学が8位、材料科学が9位でした。これは昨年より1分野減少して3分野になりました。
日本国内で総合分野ランキングのトップ20の内訳は、大学が15、研究開発法人が5で、過去二年と割合の変動はありません。また上位8機関もそれぞれ論文が増え順位がかわりませんが、2024年10月に東京医科歯科大学と東京工業大学の統合により発足した東京科学大学が9位となりました。
本年は、総合および表出した分野については、世界での高被引用論文数の順位だけでなく、高被引用論文の割合も表出しています。
総合および、分野別においても上位機関は高被引用論文数だけでなく、高被引用論文の割合も日本全体に比べて高い機関が多い傾向があります。
地球科学、免疫、物理、植物、動物学は日本全体においても、総合の1%を超える高被引用論文の割合も高くなっています。一方化学と材料化学は、上位の機関こそ高被引用論文の割合が、日本全体および、総合の1%を上回っている機関が多いですが、日本全体としては1%を下回っています。
分野別においては、総合に表出されている機関との重複もありますが、地球科学では国立環境研究所、海洋研究開発機構、気象研究所、宇宙航空研究開発機構などの研究機関が上位にでており、高被引用論文の割合も高いです。免疫学では、国立健康危機管理研究機構が入っています。植物・動物学においては、農研機構のような研究機関だけでなく、奈良先端科学技術大学、香川大学などの大学が入っています。(本データのPDF版はこちらからダウンロードしてご確認ください。)
「国内研究機関の総合分野トップ20」
<表1>総合/General(世界12位) 高被引用論文の割合1.0%
国内順位 | 大学名 | 高被引用論文数 | 高被引用論文の割合 |
1 | 東京大学 | 1709 | 1.7% |
2 | 京都大学 | 1040 | 1.5% |
3 | 理化学研究所 | 702 | 2.3% |
4 | 大阪大学 | 631 | 1.1% |
5 | 東北大学 | 577 | 1.1% |
6 | 物質・材料研究機構 | 569 | 3.3% |
7 | 名古屋大学 | 539 | 1.3% |
8 | 九州大学 | 494 | 1.2% |
9 | 東京科学大学 | 452 | 1.1% |
10 | 国立がん研究センター | 437 | 4.0% |
11 | 北海道大学 | 401 | 1.0% |
12 | 筑波大学 | 345 | 1.2% |
13 | 慶應義塾大学 | 333 | 1.3% |
14 | 広島大学 | 291 | 1.2% |
15 | 産業技術総合研究所 | 274 | 1.1% |
16 | 自然科学研究機構 | 265 | 1.9% |
17 | 神戸大学 | 256 | 1.2% |
18 | 早稲田大学 | 214 | 1.3% |
19 | 岡山大学 | 196 | 1.1% |
20 | 横浜市立大学 | 188 | 1.8% |
「分野別トップ10」
<表2>物理/PHYSICS(世界5位)
高被引用論文の割合1.3%
国内順位 | 大学名 | 高被引用論文数 | 高被引用論文の割合 |
1 | 東京大学 | 404 | 2.3% |
2 | 物質・材料研究機構 | 256 | 5.0% |
3 | 理化学研究所 | 223 | 2.7% |
4 | 京都大学 | 182 | 2.0% |
5 | 大阪大学 | 138 | 1.6% |
6 | 高エネルギー加速器研究機構 | 132 | 2.7% |
6 | 名古屋大学 | 128 | 2.0% |
8 | 東北大学 | 118 | 1.3% |
9 | 東京科学大学 | 114 | 1.9% |
10 | 筑波大学 | 86 | 1.9% |
<表3>化学/CHEMISTRY(世界8位)
高被引用論文の割合0.8%
国内順位 | 大学名 | 高被引用論文数 | 高被引用論文の割合 |
1 | 京都大学 | 147 | 1.4% |
2 | 東京大学 | 130 | 1.3% |
3 | 物質・材料研究機構 | 118 | 2.9% |
4 | 産業技術総合研究所 | 69 | 1.1% |
5 | 大阪大学 | 68 | 0.8% |
6 | 北海道大学 | 67 | 1.1% |
7 | 九州大学 | 60 | 1.1% |
8 | 東京科学大学 | 53 | 0.7% |
9 | 名古屋大学 | 50 | 1.0% |
10 | 理化学研究所 | 44 | 1.1% |
<表4>材料科学/MATERIALS SCIENCE(世界9位)
高被引用論文の割合0.8%
国内順位 | 大学名 | 高被引用論文数 | 高被引用論文の割合 |
1 | 物質・材料研究機構 | 142 | 2.0% |
2 | 東京大学 | 79 | 1.4% |
3 | 東北大学 | 53 | 0.7% |
4 | 産業技術総合研究所 | 44 | 1.1% |
5 | 京都大学 | 35 | 0.9% |
6 | 九州大学 | 33 | 0.8% |
7 | 理化学研究所 | 32 | 2.5% |
8 | 北海道大学 | 24 | 0.9% |
9 | 早稲田大学 | 23 | 2.1% |
10 | 東京科学大学 | 22 | 0.5% |
<表5>地球科学/GEOSCIENCES(世界12位)
高被引用論文の割合1.3%
国内順位 | 大学名 | 高被引用論文数 | 高被引用論文の割合 |
1 | 東京大学 | 90 | 1.4% |
2 | 海洋研究開発機構 | 70 | 1.7% |
3 | 国立環境研究所 | 59 | 5.1% |
4 | 気象庁気象研究所 | 36 | 2.7% |
5 | 北海道大学 | 36 | 1.4% |
6 | 気象庁 | 34 | 3.4% |
7 | 名古屋大学 | 29 | 1.4% |
8 | 京都大学 | 27 | 0.9% |
9 | 宇宙航空研究開発機構 | 22 | 2.5% |
10 | 九州大学 | 18 | 1.0% |
<表6>免疫学/IMMUNOLOGY(世界11位)
高被引用論文の割合1.4%
国内順位 | 大学名 | 高被引用論文数 | 高被引用論文の割合 |
1 | 大阪大学 | 35 | 2.6% |
2 | 国立研究開発法人 理化学研究所 | 24 | 3.5% |
3 | 京都大学 | 23 | 2.1% |
4 | 東京科学大学 | 21 | 3.3% |
4 | 慶應義塾大学 | 21 | 2.9% |
4 | 東京大学 | 21 | 1.4% |
7 | 広島大学 | 13 | 2.5% |
7 | 北海道大学 | 13 | 1.5% |
9 | 千葉大学 | 11 | 1.9% |
9 | 国立健康危機管理研究機構 | 11 | 0.7% |
<表7>植物・動物学/PLANT & ANIMAL SCIENCE (世界12位)
高被引用論文の割合1.2%
国内順位 | 大学名 | 高被引用論文数 | 高被引用論文の割合 |
1 | 理化学研究所 | 90 | 5.8% |
2 | 東京大学 | 82 | 1.7% |
3 | 京都大学 | 53 | 1.3% |
4 | 名古屋大学 | 52 | 3.2% |
5 | 東北大学 | 35 | 2.3% |
6 | 岡山大学 | 31 | 2.7% |
7 | 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構) | 29 | 1.1% |
8 | 奈良先端科学技術大学 | 27 | 5.2% |
9 | 北海道大学 | 26 | 0.7% |
10 | 香川大学 | 18 | 5.2% |
10 | 筑波大学 | 18 | 1.2% |
*大学共同利用機関法人 自然科学研究機構は構成する 5つの基盤機関(国立天文台、核融合科学研究所、基礎生物学研究所、生理学研究所、分子科学研究所)と二つのセンター(アストロバイオロジーセンター、生命創成探究センター)の組織名を名寄せした集計値です。
*大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構:4つの研究所(国立極地研究所、国立情報学研究所、統計数理研究所、国立遺伝学研究所)の組織名を名寄せした集計値です。
*東海大学機構は、構成する名古屋大学と岐阜大学を個別に集計しております。
*国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST):戦略的に科学技術イノベーションの創出を推進するファンディングエージェンシーとしての事業内容を鑑みてランキングには入れていませんが、高被引論文数は355報、高被引用論文の割合は2.1%でした。
国立研究開発法人 科学技術振興機構
分野 | 高被引用論文数 | 高被引用論文の割合 |
化学 | 109 | 2.1% |
物理 | 59 | 2.1% |
植物・動物学 | 45 | 6.2% |
材料科学 | 33 | 1.7% |
免疫 | 9 | 2.9% |
総合 | *355 | 2.1% |
*高被引用論文数の総合は、表に記載のない分野も含めた総計となっております。
【本分析に使用したデータベース】
Essential Science Indicators™(以下 ESI)
【高被引用論文(Highly Cited Papers)の定義】
ESI は、科学全体を大きく 22 の研究分野に分類しています。そして、それぞれの分野において被引用数が上 位1%の論文を高被引用論文(Highly Cited Papers)と定義しています。
引用は分野によって動向が異なること、一般的に論文発表から時間を経るほど多くなることを踏まえ、各年・分 野別の高被引用論文を特定し、集計しています。
本分析は、ESI に収録されている世界の研究機関情報から、日本の各研究機関が上記条件でどれだけインパ クトの高い論文を出しているかに注目しました。高被引用論文を多く輩出する研究機関は、比例してその分野 で関心を集める傾向があります。そのため、これら相対的定量データは、世界的な学問・研究にどれだけ影響力 を持っているか、その機関の世界での位置を示唆するひとつの有力な指標となります。
【データ対象期間】
2014年 1 月 1 日~2024年 12 月 31 日 (11 年間)
【Essential Science Indicators とは】
分析に用いた Essential Science Indicators は、学術論文の引用動向データを提供する統計データベー スです。学術文献・引用索引データベース「Web of Science® Core Collection」の収録レコードをもとに、 論文の被引用数から、世界のトップ 1 パーセントにランクされる研究者と研究機関の情報をそれぞれ収録して います。収録データは2か月ごとに更新されます。 Essential Science Indicators 製品概要
【InCites とは】
InCites は、Web上で提供され、カスタマイズにも対応した、引用文献に基づく研究評価ツールです。学術機 関や政府機関の管理者の皆様は、研究者の生産性を分析し、ベンチマーキングの結果を世界中の研究機関 と比較することができます。InCites 製品概要
【Web of Science とは】
Web of Science は、Web of Science Core Collection をはじめとする膨大な量の高品質な文献コンテンツを包括し、自然科学、社会科学、人文科学の情報の迅速な検索、分析、共有を支援する最高水準の調査研究プラットフォームです。Wef of Science 製品概要
クラリベイトについて
Clarivate は、世界有数の情報サービスプロバイダーです。当社は、人と組織を信頼性の高いインテリジェンスでつなぎ、人々の視点、仕事、そして世界を変えます。学術・政府機関、ライフサイエンス・ヘルスケア、および知的財産の分野で深い専門知識と結びついたサブスクリプションおよびテクノロジーベースのソリューションを提供しております。詳細については、clarivate.com/ja をご覧ください。
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