
知財を成長戦略に生かす。村田製作所は知財ポートフォリオ管理を行うべく、クラリベイトの知財管理プラットフォーム「IPfolio」を導入した。経営、エンジニア、知財部門、三者間で特許に関する「共通言語」を用いて会話ができる仕組みを構築。経営と知財が連動するポートフォリオ経営で、グローバル競争力向上を図る。
「独自の製品を供給して文化の発展に貢献する」。1944年創業以来、村田製作所の根幹に息づく創業者の思いだ。世界初・世界No.1シェアを有する電子部品も多い。パソコン、スマートフォン、電子カメラ、自動車、医療機器など、エレクトロニクス社会の発展に貢献してきた。今は「Vision2030(長期構想)」で示した「ありたい姿(Global No.1部品メーカー ~ムラタがお客様や社会にとって最善の選択になる~)」の実現を目指す。
村田製作所の海外売上比率は90%以上。グローバル競争の激化に伴い、知財戦略も変化してきたと、村田製作所法務・知財統括部知的財産部シニアマネージャーの藤井康晴氏は話す。
「特許を取得するだけでなく、いかに戦略的に行使するか。特許権侵害訴訟を起こす場合、訴訟に勝って相手企業を市場から排除するという結末は一つのシナリオに過ぎません。訴訟の提起をお客様にアピールし製品採用に向けた流れをつくったり、特許をオープンにして仲間を増やし市場におけるポジション強化を図るなど、営業部門と連携してビジネスで勝つ特許の使い方が重要です。経営層や事業部門から、攻めの知財戦略を求められています」
村田製作所 法務・知財統括部 知的財産部 シニアマネージャー 藤井康晴 氏
背景にムラタセイサク君、ムラタセイコちゃんを添えて
経営、エンジニア、知財部門が共通指標をベースに議論
タイムリーな知財の確保・蓄積は競争力に直結する。しかし投資資金も含めリソースには限界がある。村田製作所は、収益性や成長性を考慮しリソースを最適配分するポートフォリオ経営を実践。それを支えるのが知財ポートフォリオ管理だ。
「当社のエンジニアは、特許に対し高い意識を持っています。特許取得に理解がある一方で、特許を手放すことに抵抗を示します。納得を得るために、自社指針、研究開発テーマ、特許が持つ現在の実力値、ビジネス貢献度など、全事業部の特許を評価する共通指標をつくりました。過去約10年分の案件も含めて共通指標を振り終えました」(藤井氏)
特許に関する共通指標、いわば「共通言語」をベースに経営層、エンジニア、知財部門で会話ができる。知財投資の集中と選択における意思決定のスピードと正確性の向上が図れる。課題は、既存の知財管理システムがポートフォリオ管理の概念に適合していなかったことだ。「関係者間で各ポートフォリオの客観的評価を、必要な時に必要な範囲で、かつ簡単に利用できる環境が必要でした」(藤井氏)。
採用の決め手は4つ 最終的には満場一致で
同社の持続的成長を担う新知財管理システム。複数社を検討し、3社に絞りトライアルを実施した。結果、クラリベイトの知財管理プラットフォーム「IPfolio」が同社の設けた数十の評価項目全てで高い評価を得た。クラリベイトは世界有数の情報サービスプロバイダーだ。
知財には、長期視点が必要となる。「10年間使い続けることを考えて、当社の知財ポートフォリオ管理に最適なシステムとしてIPfolioを選びました。ほぼ満場一致でした」と藤井氏は話す。
2024年6月、同社はIPfolioの採用を正式に決定。藤井氏は4つの採用ポイントを挙げた。
1つ目は、知財部門だけでなくエンジニアも簡単に利用できる使いやすさ。「マニュアル無しでも直感的に使えることを重視しました。Salesforceベースのため、設定やカスタマイズも容易です。高いセキュリティーの下、ユーザーの属性に応じたアクセス制御もポイントとなりました」。
2つ目は、グローバル対応。「当社の特許出願件数において米国が日本を抜き、中国も急増しています。費用対効果を考慮し、戦略的な外国出願を積極的に行っています。IPfolioはグローバル導入実績が豊富。国内はもとより海外の知財担当も現地で特許出願の実務をスムーズに行えます。海外の特許事務所などとも円滑にやり取りできます。日本市場中心の他社製品よりもグローバル対応の観点でアドバンテージがありました」。
3つ目は、知財ポートフォリオ対応。「既存システムは1つの案件を出願し、権利化する用途にのみ適していました。IPfolioは、特許出願はもとより、案件を束にして管理できるため取捨選択のメリハリをつけられます」。
4つ目は、村田製作所と向き合う真摯な姿勢。「クラリベイトの担当者と会話する中で、多くの顧客のうちの1社としてではなく、しっかりと当社に寄り添ってもらえていると思いました。また、クラリベイトにはアジアのエンジニアも多く在籍され、日本を含むアジア市場に対する本気度を感じました。日本発グローバル企業の当社にとっての知財パートナーを選択したと考えています」。
IPfolioによる新知財管理システムは現在、ワークフロー構築などを実施中。2026年夏の本稼働を目指す。「新システムに合わせた業務の見直しも進めています。またIPfolioもAI機能強化を図っていると聞いています。AI活用による知財業務の生産性向上は重要なテーマです。一昔前、経営層からは特許収支に関する質問が多かった。今は特許の使い方によってビジネスチャンスが広がります。知財部門は特許という経営資源の客観的分析を行い、的確な共通指標をタイムリーに提示し経営貢献度を高めていきたいと思います」。
2030年に向けた村田製作所の知財部門の戦略構想
「Vision2030(長期構想)」の実現には、同社の知財部門の戦略構想が全面的に重要な役割を担う
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知財を次のレベルに「IPfolio」
IPfolioはSalesforce上に構築された、クラウド型のグローバル知財管理ソリューションです。世界の革新的な企業に数多く導入され、知財ライフサイクルマネジメント実現のサポートをしています。
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Website:https://clarivate.com/intellectual-property/ja/ip-management-software/ipfolio/