2024 年に注目すべき医薬品

Clarivateがその年の注目の医薬品を発表している年次レポート「Drugs to Watch 」では、商業的に、あるいは、臨床的に傑出した可能性を持つ13の医薬品を取り上げています。これらの医薬品は、患者ケアを向上させ、次世代の医療ブレイクスルーを促進する大きな可能性を秘めています。今年の注目の医薬品に共通するテーマは以下の通りです。:

  • 新しい、モダリティや技術を用いて開発された医薬品:
    • アストラゼネカと第一三共が共同開発したdatopotamab deruxtecanはクラス最高の標的抗体薬物複合体となる可能性があります。クラリベイトのデータでは、Datopotamab deruxtecan,の米国における転移性NSCLC治療薬の開発成功確率は90%であり、2029年の売上見込み(乳がんおよびNSCLの合計)は27憶ドルと予測されています。
    • CRISPR Therapeutics および Vertex Pharmaceuticals の CASGEVY™/exagamglogene autotemcel と Bluebird Bio の LYFGENIA™/lovotibeglogene autotemcel は、これまで対処療法しかなく、治療法が限られていた鎌状赤血球症(SCD)およびβサラセミアに対する初の疾患修飾薬です。クラリベイトは、CASGEVY™ だけで 2029 年に 13 億 2,000 万ドルの売上げを予測しています。

     

  • これまで治療不可能だった、または十分に治療が受けられていなかった疾患に対する治療も、もう 1 つの注目すべき点です。 SCDおよび輸血依存性βサラセミアに対する CASGEVY™ 、LYFGENIA™ に加えて、以下のものがその注目医薬品として挙げられます。:
    • Phizerの ABRYSVO™/RSVPreF と GSK plc の AREXVY/RSVPreF3 は、乳幼児と高齢者を対象とした初のRSウィルス (RSV)感染症 ワクチンです。公衆衛生の専門家が「トリプルデミック」と称している、RSV感染症、 インフルエンザおよび COVID-19の3つの感染症の同時期の流行により、 特に発症リスクが最も高い集団に関して、医療負担が増大しています。 乳幼児および高齢者を対象とした RSVワクチン(RSVpreFおよびRSVpreF3)の初の承認は、公衆衛生上の重要な節目となります。
    • Johnson & Johnson Innovative Medicineの TALVEY™/ Talquetamabは、治癒困難で再発頻度の高い多発性骨髄腫の治療のためのファースト・イン・クラスの二重特異性抗体です。クラリベイトは、この医薬品が2029年までに8億5,000万ドルの売上げになると予測しています。

     

  • 既存の治療法が患者さんや臨床医に与える負担を大幅に軽減する可能性のある新しい治療薬として、以下が挙げられています。:
    • バイエル薬品、リジェネロン・ファーマシューティカルズが開発したEYLEA® HD/afliberceptは、湿性加齢黄斑変性(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)または糖尿病網膜症(DR)の患者において、12週間および16週間間隔での投与により、現在の標準治療と同様の有効性と安全性を達成することができます。クラリベイトのデータでは、米国における 、湿 性 AMD、DMEおよびDR治療薬の開発成功確率は75%であり、2029年までにG7市場で17億7000万ドルの売上げが予測されています。
    • ALTUVIIIO™/efanesoctocog alfaは、サノフィ(Bioverativ Therapeutics Inc)とスウェーデンのOrphan Biovitrum AB(Sobi®)が共同開発した、週1回の静脈内投与による第VIII因子(FVIII)補充療法であり、現在使用可能な他のFVIII補充療法の投与頻度に伴う患者負担の軽減に役立ちます。クラリベイトのデータによると、この医薬品がEUで承認される確率は95%であり、2029年には17億ドルの売上げが見込まれている。

 

さらに、本レポートは中国本土で成長する慢性疾患市場に焦点を当てており、ブロックバスターの地位を獲得するあるいは、患者さんに大きな影響を与える可能性のある医薬品を7つ特定しています。

 

注目のトレンド

本レポートでは、注目すべき主なトレンドとして以下を上げています。:

  • 遺伝子編集および人工知能(AI)/機械学習(ML)の台頭。遺伝子編集とAI/MLが医療に与える大きなインパクトは、すでに医薬品パイプラインで明らかになりつつある。
  • インフレ抑制法(IRA)による市場参入およびポートフォリオ戦略の混乱の影響。IRA法の影響により、企業は市場参入および、市場参入およびポートフォリオ戦略を広く見直す必要が生じています。
  • バイオシミラー市場は成長の痛みに直面。バイオシミラー市場の成熟度にはばらつきがあり、特に欧州では躍進しているが、米国ではいくつかのスピードバンプにぶつかっている。
  • リアルワールドデータ(RWD)はイノベーションサイクルの加速および安全性問題の早期発見を可能にします。

 

クラリベイトのライフサイエンス&ヘルスケア部門のプレジデントであるHenry Levyは、次のように述べています。「過去10年間の科学的ブレークスルーに支えられた新しい治療法が臨床的成功を収め、これまで満たされていなかった医療ニーズを持つ患者さんに治療法を提供し始めています。その一方で、医療費抑制に向けた政府の 取り組み、高止まりする資本コスト、世界的な地政学的紛争といった外部要因が、このセクターへの投資意欲にブレーキをかけています。」

 

方法論

今年の「2024年Drugs to Watch」リストを特定するために、数百の疾患、医薬品、市場をカバーする160人以上のクラリベイトのアナリストが専門知識を活用し、研究開発および商業化のライフサイクルにまたがる11の統合データセットを用いました。その後、クラリベイトの専門家が、承認・発売予定日、競合状況、規制状況、臨床試験結果、市場力学 などの要因に基づき、各医薬品を個別の文脈で手動評価し、ブロックバスターには至らないものの、治療 のゲームチェンジャーとなる可能性のある新薬を追加しています。

  • ブロックバスターとは、 一般的に年間売上10 億ドルというマイルストーンを意味します。5年以内にブロックバスターになる、あるいは治療パラダイムを変革すると予測される、最近発売された医薬品や今年発売予定の医薬品を紹介しています。
  • また、ある疾患に対する標準治療を大幅に進歩させ、患者さんに対して大きな利益をもたらす可能性のある医薬品も含めています。

Drugs to Watch 2024のダウンロードはこちら: https://clarivate.com/ja/drugs-to-watch/.