商標登録の増加:2022年の落ち込みを経て、2023年は出願が回復

2022年、世界の商標登録出願件数が減少し、これが何を意味するのかという疑問が持たれていました。2023年のデータは、2年連続の減少という不確実な経済の見通しを示しているのでしょうか。それとも、出願活動は回復しているのでしょうか。

この疑問に答えるため、私たちはCompuMark™から商標データを抽出し、商標登録出願記録を分析しました。欧州連合知的財産庁(EUIPO)などの各国の庁(PTO)から直接集めた出願記録をはじめとする1億4,700万件以上の商標レコードから商標のインテリジェンスを導き、マクロな動向と市場に関する重要なインサイトを明らかにしました。

EUIPOに対する商標登録出願の動向の重要性

EUIPOは世界で最も重要な商標登録機関の1つです。27の加盟国、人口4億5,000万人以上(米国の人口を上回る)から成る商業市場をカバーしており、2023年における全加盟国のGDP合計は18兆米ドル以上(中国本土のGDPを上回る)と推定されています。

この魅力的な市場は世界の商標活動の中心であり、EUIPOの動向を見れば、さらに広範な世界の商標戦略の動向をうかがうことができます。EUIPOへの出願活動を分析することで、リスクに発展しそうな問題や注目すべき成長分野を見つけ出し、主要な出願人の優先事項を明らかにすることができます。

2023年はポーランドと中国本土が出願増加を牽引

2023年、欧州連合商標(EUTM)の総出願件数(144,214件)は、2022年の件数(138,607件)を4%上回りました。その大部分は、中国本土とポーランドからの出願が増加したことによるものです。

出典:Clarivate™(CompuMark SAEGIS®からの出力データ)

出願の約63%はEUを拠点とする出願人によるものですが、中国本土(15%)と米国(7%)からも多数の出願が行われていました。2023年のポーランドからのEUTM出願は、英国からの出願件数を上回りました。これは、EUにおけるポーランド系企業の商業活動が活発化していることを示しています。中国本土からの出願は2022年から9%増加しましたが、ポーランドからのEUTM出願件数は2022年よりも19%増加していました。米国からの出願は12%減少しました。

EUIPOに対する出願人の国別出願件数(2023年)

  1. 中国本土:21,701件(2022年比9%増)
  2. ドイツ:19,391件(3%減)
  3. イタリア:12,380件(2%減)
  4. スペイン:10,989件(7%増)
  5. 米国:9,399件(12%減)
  6. フランス:7,221件(3%増)
  7. ポーランド:6,573件(19%増)
  8. 英国:5,741件(4%減)
  9. オランダ:5,037件(4%増)
  10. オーストリア:3,494件(2%増)
  11. スウェーデン:3,296件(8%減)
  12. ベルギー:2,314件(増減なし)

米国のEUTM出願活動の失速と中国本土の躍進

2023年は、EUIPOに出願した上位75の代理人により合計約4万4,000件のEUTM出願が行われていました。これは、EUTM出願の約3分の1に相当します。

2023年にEUIPOに出願した上位10の代理人のうち5社がスペインを拠点としており、出願件数で上位10に入るすべての代理人が、主に中国本土の出願人の代理をしていました。

Clarivate™(CompuMark SAEGIS®からの出力データ)

2023年11月、Arpe Patentes y Marcas社とH&A(Herrero and Asociados)社が合併しました。双方を合わせて考えると、2023年中のEUIPO登録出願数は2,000件以上で、出願数第3位の特許事務所ということになります。

スペインを拠点とする代理人が最も多く、同国の18社が上位75の代理人に入っています。ポーランドはここでも頭角を現しており、5社の代理人がランクインしています。スペインとポーランドを拠点とする代理人の大多数は、主に中国本土のクライアントの代理で出願しています。

EUIPOへ出願した上位75の代理人の拠点国分布(2023年)

スペイン:18社
イタリア:11社
ドイツ:10社
複数拠点:8社
ポーランド:5社
フランス:5社
オランダ:4社
アイルランド:4社
スウェーデン:2社
リトアニア:1社
ルーマニア:1社
ルクセンブルク:1社
スロバキア:1社
キプロス:1社
ギリシャ:1社
フィンランド:1社
ベルギー:1社

上位75のEUTM出願代理人のうち25の代理人が、中国本土を拠点とする出願人をクライアントとしています。米国の出願人は、引き続き英国に拠点を置く代理人にEUTMポートフォリオの管理を依頼していますが、2023年は米国からの依頼が減少したため、こうした英国の代理人のほとんどで、対2022年比のEUTM出願件数が減少しています。

リスク情勢複雑化の兆しを示す出願件数の増加

EUIPOへの商標出願活動は、3年にわたり前例のない増減を経たのち、昨年、予測可能な状態に戻りました。出願件数は年間を通して安定しており、特に第4四半期は活発な動きを見せていました。

高金利と物価高の問題は、ブランドの創造と投資に大きな影響は及ぼしていないように見受けられることから、2024年のEUTM出願数は4%~6%増加すると考えられます。

中国本土はEU市場に注力するだけでなく、国内でもイノベーション活動が盛んであることから、2024年のブランドの創造と保護に関するリスク情勢は複雑さを増すことでしょう。

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