インパクトの高い論文数分析による日本の研究機関ランキング2019年版を発表
~日本全体としては化学、物理学、材料科学などの分野で高い影響力を維持
国立研究開発法人等の公的機関のパフォーマンスが光る~
2019年4月11日(日本時間)
東京発
クラリベイト・アナリティクス・ジャパン株式会社(以下、クラリベイト・アナリティクス)は、高被引用論文数の分析による日本の研究機関ランキングを発表しました。本分析は、後続の研究に大きな影響を与えている論文(高被引用論文)数をもとに、世界の中で日本が高い影響力を持っている研究分野において、国内で特に存在感のある研究機関を特定する試みです。
クラリベイト・アナリティクスでは各研究分野における被引用数が世界の上位1%に入る、卓越した論文を高被引用論文と定義しています。高被引用論文は、影響力の強い研究者である高被引用論文著者の選定をはじめ、論文の卓越性を客観的にはかる指標として広く使用されています。
今回の分析で日本の高被引用論文の総数は、昨年と同様世界第12位でした。分野別では、分子生物学・遺伝学が10位圏外となり、10位以内にランクインしたのは昨年から1分野減少した7分野となりました。
日本国内で総合分野のトップ20の内訳は、大学が14校、大学以外が6機関となっています。これらの国立研究機関のほとんどで、その高被引用論文の割合は日本全体での平均0.87%を上回ります。特に理研や物質・材料研究機構、国立がん研究センター、高エネルギー加速器研究機構では2%を超えており、インパクトの高い論文を多く輩出していることがわかります。
分野別で見ると、総合分野にはランクインしていない特徴のある研究機関が存在感を示しています。たとえば、情報システム・研究機構、国立精神・神経医療研究センターは、生物学で存在感を示しています。植物動物学では農研機構、国際農林水産業研究センター、地球科学では海洋研究開発機構、国立環境研究所、気象庁気象研究所、宇宙航空研究開発機構などが成果を上げています。
「国内研究機関の総合分野トップ20」
<表1>総合/General
国内順位 | 機関名 | 高被引用論文数 | 高被引用論文の割合 |
1 | 東京大学 | 1474 | 1.7% |
2 | 京都大学 | 918 | 1.4% |
3 | 理化学研究所 | 707 | 2.6% |
4 | 大阪大学 | 584 | 1.2% |
5 | 東北大学 | 528 | 1.1% |
6 | 名古屋大学 | 464 | 1.3% |
7 | 九州大学 | 362 | 1.0% |
8 | 物質・材料研究機構 | 337 | 2.3% |
9 | 東京工業大学 | 334 | 1.3% |
10 | 筑波大学 | 294 | 1.3% |
11 | 産業技術総合研究所 | 291 | 1.1% |
12 | 北海道大学 | 268 | 0.8% |
13 | 岡山大学 | 239 | 1.5% |
14 | 神戸大学 | 219 | 1.3% |
15 | 慶應義塾大学 | 203 | 1.0% |
16 | 広島大学 | 201 | 1.1% |
17 | 早稲田大学 | 193 | 1.5% |
18 | 国立がん研究センター | 190 | 2.7% |
19 | 自然科学研究機構 | 184 | 1.5% |
20 | 高エネルギー加速器研究機構 | 179 | 2.8% |
※科学技術振興機構(JST)は戦略的に科学技術イノベーションの創出を推進するファンディングエージェンシーとしての事業内容を鑑みランキングには入れてありませんが、高被引論文数は628報、高被引用論文の割合は2.2%でした。
「分野別トップ10」
日本の研究機関が著者所属機関に含まれる高被引用論文の総計が、世界順位で上位の分野から、日本の大学・研究機関を抽出しました。
< 表2 > 化学/CHEMISTRY(世界5位)
順位 | 機関名 | 高被引用論文数 | 高被引用論文の 割合 |
1 | 東京大学 | 157 | 1.7% |
2 | 京都大学 | 153 | 1.4% |
3 | 物質・材料研究機構 | 100 | 2.7% |
4 | 大阪大学 | 96 | 1.1% |
5 | 産業技術総合研究所 | 86 | 1.3% |
6 | 東京工業大学 | 56 | 0.8% |
7 | 北海道大学 | 53 | 1.0% |
8 | 名古屋大学 | 52 | 1.2% |
9 | 九州大学 | 48 | 0.9% |
10 | 東北大学 | 47 | 0.7% |
< 表3 > 生物学・生化学/BIOLOGY & BIOCHEMISTRY(世界10位)
順位 | 機関名 | 高被引用論文数 | 高被引用論文の 割合 |
1 | 東京大学 | 60 | 0.9% |
2 | 京都大学 | 55 | 1.3% |
3 | 理化学研究所 | 43 | 1.3% |
4 | 大阪大学 | 28 | 0.7% |
5 | 東北大学 | 19 | 0.8% |
6 | 産業技術総合研究所 | 15 | 0.8% |
6 | 九州大学 | 15 | 0.6% |
8 | 情報システム・研究機構 | 13 | 3.3% |
8 | 北海道大学 | 13 | 0.5% |
10 | 国立精神・神経医療研究センター | 12 | 6.2% |
< 表4 > 免疫学/IMMUNOLOGY (世界8位)
順位 | 機関名 | 高被引用論文数 | 高被引用論文の 割合 |
1 | 大阪大学 | 58 | 4.7% |
2 | 理化学研究所 | 36 | 4.7% |
3 | 東京大学 | 28 | 2.0% |
4 | 京都大学 | 24 | 2.7% |
5 | 慶應義塾大学 | 17 | 3.3% |
6 | 千葉大学 | 14 | 2.9% |
7 | 日本医科大学 | 11 | 6.3% |
8 | 順天堂大学 | 10 | 2.0% |
9 | 東京医科歯科大学 | 9 | 2.0% |
10 | 横浜市立大学 | 8 | 3.4% |
< 表5 > 材料科学 /MATERIALS SCIENCE (世界7位)
順位 | 機関名 | 高被引用論文数 | 高被引用論文の 割合 |
1 | 物質・材料研究機構 | 118 | 2.2% |
2 | 東京大学 | 62 | 1.6% |
3 | 東北大学 | 57 | 0.9% |
4 | 産業技術総合研究所 | 56 | 1.5% |
5 | 理化学研究所 | 34 | 4.3% |
6 | 京都大学 | 27 | 0.8% |
7 | 大阪大学 | 21 | 0.5% |
8 | 九州大学 | 19 | 0.7% |
9 | 北海道大学 | 17 | 0.8% |
10 | 早稲田大学 | 15 | 1.8% |
< 表6 > 地球科学 / GEOSCIENCE (世界10位)
順位 | 機関名 | 高被引用論文数 | 高被引用論文の 割合 |
1 | 東京大学 | 82 | 1.5% |
2 | 海洋研究開発機構 | 75 | 2.0% |
3 | 国立環境研究所 | 59 | 5.0% |
4 | 気象庁気象研究所 | 30 | 2.6% |
5 | 宇宙航空研究開発機構 | 27 | 4.2% |
6 | 名古屋大学 | 27 | 1.6% |
7 | 京都大学 | 26 | 1.0% |
8 | 高知大学 | 22 | 3.5% |
9 | 東北大学 | 18 | 0.9% |
10 | 九州大学 | 17 | 1.2% |
10 | 北海道大学 | 17 | 0.7% |
< 表7 > 物理 /PHYSICS (世界6位)
順位 | 機関名 | 高被引用論文数 | 高被引用論文の 割合 |
1 | 東京大学 | 452 | 2.6% |
2 | 京都大学 | 228 | 2.3% |
3 | 理化学研究所 | 219 | 2.8% |
4 | 大阪大学 | 163 | 1.7% |
5 | 高エネルギー加速器研究機構 | 160 | 3.2% |
6 | 名古屋大学 | 157 | 2.6% |
7 | 東京工業大学 | 154 | 2.3% |
8 | 筑波大学 | 138 | 2.9% |
9 | 東北大学 | 134 | 1.3% |
10 | 首都大学東京 | 113 | 4.9% |
< 表8 > 植物・動物学 / PLANT & ANIMAL SCIENCE (世界8位)
順位 | 機関名 | 高被引用論文数 | 高被引用論文の 割合 |
1 | 理化学研究所 | 134 | 8.4% |
2 | 東京大学 | 106 | 2.3% |
3 | 京都大学 | 51 | 1.3% |
4 | 農研機構 | 46 | 3.3% |
5 | 名古屋大学 | 43 | 3.1% |
6 | 岡山大学 | 38 | 3.4% |
7 | 東北大学 | 38 | 2.8% |
8 | 国際農林水産業研究センター | 25 | 7.1% |
8 | 奈良先端科学技術大学 | 25 | 5.0% |
8 | 自然科学研究機構 | 25 | 5.0% |
8 | 千葉大学 | 25 | 3.2% |
※科学技術振興機構は研究助成機関であることも鑑みランキングには入れてありませんが、各分野における高被引論文数と高被引用論文の割合は以下の通りです。
分野 | 高被引用論文数 | 高被引用論文の割合 |
化学 | 171 | 2.1% |
物理学 | 141 | 2.1% |
材料科学 | 72 | 3.1% |
生物学・生化学 | 49 | 1.6% |
植物・動物学 | 44 | 5.0% |
免疫学 | 33 | 5.3% |
【本分析に使用したデータベース】
› Essential Science Indicators™(以下ESI)
【高被引用論文(Highly Cited Papers)の定義】
ESIは、科学全体を大きく22の研究分野に分類しています。そして、それぞれの分野において被引用数が上位1%の論文を高被引用論文(Highly Cited Papers)と定義しています。
引用は分野によって動向が異なること、一般的に論文発表から時間を経るほど多くなることを踏まえ、各年・分野別の高被引用論文を特定し、集計しています。
本分析は、ESIに収録されている世界の研究機関情報から、日本の各研究機関が上記条件でどれだけインパクトの高い論文を出しているかに注目しました。高被引用論文を多く輩出する研究機関は、比例してその分野で関心を集める傾向があります。そのため、これら相対的定量データは、世界的な学問・研究にどれだけ影響力を持っているか、自機関の世界の位置を示唆するひとつの有力な指標となります。
【データ対象期間】
2008年1月1日~2018年12月31日 (11年間)
ESIの22分野分類の詳細と定義については、こちらをご覧ください。
【注意】
ESIでは、共著者の所属機関をすべて網羅し包括的に収録しています。第一著者、責任著者、その他の著者の区別なく整数カウントを行っているため、日本の研究機関が著者所属機関に含まれる高被引用論文の総計が順位に反映されます。カウント方法の詳細は、こちらのレポートを参照ください。
【Essential Science Indicatorsとは】
分析に用いたEssential Science Indicatorsは、学術論文の引用動向データを提供する統計データベースです。学術文献・引用索引データベース「Web of Science® Core Collection」の収録レコードをもとに、論文の被引用数から、世界のトップ1パーセントにランクされる研究者と研究機関の情報をそれぞれ収録しています。収録データは2か月ごとに更新されます。
› Essential Science Indicators 製品概要
【InCitesとは】
InCites は、Web上で提供され、カスタマイズにも対応した、引用文献に基づく研究評価ツールです。学術機関や政府機関の管理者の皆様は、研究者の生産性を分析し、ベンチマーキングの結果を世界中の研究機関と比較することができます。
› InCites 製品概要
【Web of Scienceとは】
Web of Science は、Web of Science Core Collectionをはじめとする膨大な量の高品質な文献コンテンツを包括し、自然科学、社会科学、人文科学の情報の迅速な検索、分析、共有を支援する最高水準の調査研究プラットフォームです。
› Wef of Science 製品概要
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クラリベイト・アナリティクスについて
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