伝わる英語論文タイトルとアブストラクトを書く
Web of Scienceの収録論文を使って英語論文のコツを今年も伝授します

 

中山 裕木子 氏
株式会社ユー・イングリッシュ 代表取締役
公益社団法人日本工業英語協会 理事・専任講師

 

新学期が近づいてきました。この春はin-person(対面)での授業が再開される大学が増えているようです。引き続きstay safe and healthyにて、日本の研究者のみなさまが効果的かつ効率的に英語を学ばれる機会が増えることを願っています。

さて、英語論文を多数の読者に届けるためには、「タイトル」と「アブストラクト」を効果的に書くことが重要です。タイトルには意図する読み手の検索にかかりやすいキーワードを含めます。そしてタイトルが例えばWeb of Scienceを使った検索にかかれば、次は「アブストラクト」を読んでみたいと思われるよう、端的に研究内容を表す必要があります。「アブストラクト」が読まれる機会を得たら、本文全体へと読み手を誘導するために、的確なストーリーにて読みやすくアブストラクトを構成する必要があります。研究の問題と目的を簡潔に記載し、実験について説明し、主な成果と主要な結論を示し、論文の要点と範囲が読み手にわかるようにアブストラクトを書きます。

そのような効果的な「タイトル」と「アブストラクト」を書くために役に立つ英語表現のコツがあります。

本ブログでは、まず「タイトル」の英語表現のコツを一部抜粋してお伝えします。

 

タイトルのコツ1 前置詞を駆使して係りを明示する
タイトルは「名詞」を羅列して構成します。そこで、名詞と他の単語との関係を表す役割を有する「前置詞」を上手く使えると便利です。

 

前置詞asを使って「~としての~」を端的に表しています。前置詞forを使って用途を端的に表しています。

 

前置詞withで「~を有する」を表しています。また、前置詞forで用途を表しています。

 

前置詞inで「~という(広がりをもった)場所における」を表しています。前置詞withで「~を使って」を表しています。

 

タイトルのコツ2 文法的に正しく冠詞を使う
タイトルの「冠詞(theやa/an)」をどうすればよいか迷うことがあるでしょう。省いてしまったほうが良いのか。何か決まりごとはあるのか。Web of Scienceを使って検索した多くの論文タイトルには、冠詞が通常の文法通りに使用されています。そこで、タイトルでも冠詞を理由なく省くことなく、文法通りに使用することがおすすめです。ただ一つ、ルールが明記されているものに「タイトル冒頭のThe」があります。アメリカ化学会のスタイルガイド(The ACS Style Guide)には冒頭のtheを省いても良いことが書いてあります。(In most cases, omit “the” at the beginning of the title. The ACS Style Guide, 3rd edition)

 

必要な箇所に冠詞theを使用しています。

 

必要な箇所に冠詞Aを使用しています。

 

「結晶構造」には本来the crystal structureのようにtheが入りますが、タイトルの冒頭のtheが省かれています。一方、exchanger(交換体)は可算名詞ですので、不定冠詞aが使用されています。

 

タイトルのコツ3 動名詞で開始するタイトルも使ってよい
タイトルは各単語同士の係りが明確であるべきです。名詞形が多くなり係りがわかりにくくなりそうなときに助けとなるのが「動名詞」で開始するタイトルです。

 

 

 

動名詞quantifying(定量化する)を使うことで、直後に目的語を置けます。動名詞は動詞の名詞形とは異なり、動詞としての役割を有しているためです。つまり、動詞の名詞形quantificationを使うとQuantification of global soil carbon losses in response to warmingやQuantification of inactive lithium in lithium metal batteriesというようにofが必要になりますが、動名詞を使うことでofが不要になります。動名詞で開始するタイトルも昨今多く見られます。

 

タイトルの英語表現のコツを抜粋してお伝えしました。来る4月15日(木)のセミナーでは、前半にタイトル、後半にアブストラクトの英語表現のポイントをお伝えします。本ブログでご紹介したタイトルのコツに加えて、さらに「サブタイトルの表現」などを扱います。

Web of Scienceから様々な分野の英語論文を使って、タイトル・アブストラクトを効果的に書く方法を学びましょう。今回は、タイトルの表現テンプレート、それからアブストラクトで便利に使える動詞集をプレゼントします。

また、ご自身の分野の論文をデータベースから探したい という方のために、クラリベイト担当者から、Web of Scienceを使った「インパクトが高い論文(高被引用論文・利用回数の多い論文・インパクトファクターが付与されたジャーナル論文)」を簡単に見つける方法のデモもいたします。ご参加をお待ちいたします。

 

<開催概要>
本セミナーはウェブセミナーです。伝わる英文タイトル・アブストラクトを書くコツを伝授します。
開催日時に参加できなくても、事前申込を頂いた方には後で録画版をお送りします。いつでも好きな時に視聴頂けます。

お申し込みはこちら

日時:4月15日(木)午後2時開始
参加対象:研究者・大学院生・URA・図書館員・研究推進の方など、研究および研究支援に関わる方
(同業者はお断りする場合がございます)
講師:
中山裕木子氏 (株式会社ユー・イングリッシュ 代表取締役)

 

同発表者による昨年の内容を復習されたい方は、次の動画をご覧ください。
2020年4月「英語論文の読み方」
2020年9月「英語論文の書き方」