ノーベル賞でさらに盛り上がる「リチウムイオン電池」の注目論文と最新の研究動向は?

ノーベル賞でさらに盛り上がる「リチウムイオン電池」の注目論文と最新の研究動向は?

2019年11月
シニア・データコンサルタント 安藤 聡子

 

2019年のノーベル化学賞の受賞テーマは「リチウムイオン電池の開発」でした。リチウムイオン電池の論文は最近急増しており、87,000報も収録されています。その中でも今回の受賞者John B. Goodenough、M. Stanley Whittinghamの最多の引用を受けたこのテーマの論文は現在被引用数でみると全分野の論文の中でもトップ中のトップの論文として目立っています。このようにノーベル賞クラスの論文は、被引用数が際立っていることが多く、成長が著しいため、論文数が多いテーマの場合も中心となる論文を被引用数からみつけることができます。

 

目次

リチウムイオン電池の論文数推移

リチウムイオン電池研究とクラリベイト引用栄誉賞

ノーベル賞受賞者の最も引用された論文

まとめ

 

リチウムイオン電池の論文数推移

2019年ノーベル化学賞のテーマは「リチウムイオン電池」でした。富士経済の報告によりますとリチウムイオン電池の応用範囲は幅広く、すでにその市場は2017年に3兆円に達しています。今後は車載電池への応用など、ますますその市場の成長が期待されており2022年には2017年の2倍以上にもなるという予測もでています。関連した研究が盛んにおこなわれているかどうかをみると、論文数も非常に伸びています(図1)

図1 「リチウム」と「電池」で検索したWeb of Scienceのレコード数推移(2019年11月6日現在)

 

リチウムイオン電池研究とクラリベイト引用栄誉賞

クラリベイト・アナリティクスでは毎年9月に、クラリベイト・アナリティクス引用栄誉賞(2016年まではトムソン・ロイター引用栄誉賞)として、引用からみた「ノーベル賞クラスの研究」とそのテーマの中心となる研究者を発表しています。2019年のノーベル化学賞受賞者3名のうち、John B. Goodenough、M. Stanley Whittinghamは、2015年に「リチウムイオン電池の開発を導いた先端的研究」で引用栄誉賞を受賞しています。このようなノーベル賞クラスの研究の多くは、引用回数が1,000回以上になっていることが多く、この二人の研究も例外ではありませんでした。ちなみに引用回数1,000回以上の論文は、Web of Scienceが収録している論文全体のわずか上位0.04%です(図2)。

図2 引用回数の累積度(Web of Science core collection Article, Review, Proceedings Paper )

 

ノーベル賞受賞者の最も引用された論文

John B. Goodenoughの最多被引用論文

Phospho-olivines as positive-electrode materials for rechargeable lithium batteries(全文を読む)
著者名: Padhi, AK; Nanjundaswamy, KS; Goodenough, JB
JOURNAL OF THE ELECTROCHEMICAL SOCIETY   巻: 144   号: 4   ページ: 1188-1194   発行: APR 1997
2015年時点被引用数 3437 現在の被引用数 5463(2019年11月現在)

Mr. Stanley Whittinghamの最多被引用論文

Lithium batteries and cathode materials(出版社ページへいく)
著者名: Whittingham, MS
CHEMICAL REVIEWS   巻: 104   号: 10   ページ: 4271-4301   発行: OCT 2004
2015年時点被引用数 1797 現在の被引用数 3638(2019年11月現在)

 

まとめ

産業への応用も非常に多分野にわたり、今後の市場発展がますます期待されるリチウムイオン電池分野については、論文発表も急増しています。被引用数は万能ではありませんが、このように論文発表が急増しているような分野においても、「ある分野を牽引するような論文」を見つけるには非常に有効な手段と言えるでしょう。ノーベル賞とWeb of Science(引用索引)についてもっと詳しくお知りにないかたはこちらNew Tools for Improving and Evaluating The Effectiveness of Research(1966) をご一読ください。

 

Web of Science Groupの他のブログも読む

 

【データソース】 学術文献・引用索引データベース「Web of Science® Core Collection」

Web of Science製品概要・企業での活用事例

Web of Scienceの無料トライアルを申し込む

 

クラリベイトでは、皆様に取り上げてほしいトピックを募集しています。気になるトピックやご要望はお気軽にお知らせください。

この記事に関するお問い合わせはJapan.GAInquiry@clarivate.com までご連絡下さい。